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転生ガチャ~悪役令嬢の後日譚  作者: 帆船
第三章:国難
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【火竜】

 中村さんに王子の印象を聞いたら案の定『幼児の相手は疲れる』だった。ならば婚約者はアンにしたほうがいいだろう。マリアにも陛下の寿命の事は伏せて、どうしても早くに婚約者を決めたいという意向だけを伝えてアンを婚約者にすることに納得してもらった。その後は念のため父上にも書簡で陛下から婚約の打診を受けてそれを了承する旨を伝える。


 王宮に連絡を入れるとひと月ほど経ってから大々的に王太子の婚約が発表された。多少時間がかかったのはアチコチに根回しをしてたんだろう。


 王都全体が祝賀ムードに包まれる中、悪い知らせが届いた。東の不毛の大地から出てきた竜がセルシオ領まで侵入して大きな被害が出ているらしい。国王の勅令で王家所有の騎士団のみならずオーリス公爵、レクサス公爵の保有騎士団にも討伐命令が出た。もちろん魔道騎士団も動員がかかっていて総員で赴くことになった。

 私は団長を退いたけど、今回は後方から指示を出してたんじゃ間に合わないと判断して前線に出る事にした。他にナツヒ先輩も神官騎士の精鋭を連れて討伐に参加してくれる。


 アリオン伯爵領ピラーの街の近くに対竜前線基地を建設することにして、私はピラー子爵に面会に行った。トーケ先輩の奥さんのご実家だからね。私も先輩の結婚式の時に面識があるんで話しやすい。子爵邸には都合のいいことにアリオン伯爵も竜対策のために来ていたので前線基地建設について許可をもらう。こっちは国王の勅書があるから先方の意向を無視してもコトを進められるんだけどわざわざ軋轢を生むこともあるまい。協力体制を敷けたほうが絶対にいいに決まってるんだから。


 この地の統治者たちに快諾をもらった私は、さっそくピラーの街近郊に基地建設を始めた。こういうところは魔道騎士団の本領が発揮される。荒地は一晩で整地され、空堀と土塁で簡単な防御も作らせた。平行して森を切り開き木材を調達するといくつかのログハウスを作る。

 今回は魔道騎士団だけでなくナツヒ先輩の神官騎士たちや王家の騎士団もいる事を考えて三千人規模の駐屯を見積もった大規模な設営になった。それでも魔道騎士団の練度も上がってるんでみるみる内に前線基地が出来上がっていく。

 対策が長期化することも考えて、畑も作りイモや麦を植える。作物に聖属性魔力を注ぐのには神官騎士たちも協力してくれた。


 そうして準備が整った頃に主力の騎士団が到着した。率いてきたのは近衛騎士団長、なんで?と聞くと『次期国王の後ろ盾となるお方を守らないわけにはいかない』と耳打ちされた。ああ、このひとも陛下の身体の事知ってるのか。しかしこの駐屯地に来たのが近衛騎士団と言うのは都合がいい。エナドリ飼い葉は重要機密だからね。近衛騎士は陛下のステア来訪時に知ってて箝口令が敷かれてるから機密漏洩の心配が減る。もしかしてだけど、この辺も近衛騎士団を派遣した理由なのかもしれない。


 一方、レクサス公爵の騎士団は独自でセルシオ領に入っているらしい。また父上もオーリス騎士団三百騎をアクシオ侯爵領に派遣しているそうだ。アクシオ侯爵は魔物が棲息する湖からの防衛の任があるため、侯爵家にしては対魔物戦力を別枠で保有している。今回はセルシオ領の北側から南下していくようだ。


 準備が整う直前、ハニャス先輩は強行偵察部隊を派遣していた。その報告によると三か月ほど前に『武者修行に行く』と称して一人で東の地に赴いた若い騎士が居たという。これは複数の村で確認が取れたという事だ。今から一か月ほどまえその騎士と見られる人物が火竜と戦いながらセルシオ領に乱入。この時、この騎士は身体が一回り大きくなり全身が赤黒く肌には鱗が生えていたという。そして信じられない事に単騎で火竜と互角に渡り合っていたそうだ。


 両者の戦いは熾烈を極め、周囲の被害など全く意に介さずにセルシオ領を北に縦断していったらしい。


 一方の火竜のほうは目撃情報によればかなりの巨体で老竜エルダードラゴンと推定されたが、ひょっとしたら古代竜であるエンシェントドラゴンの可能性も取りざたされた。


「よもやとは思いますが竜に戦いを挑んだ挙句に領内に災いを招き入れたんでしょうか?」

「だとしたら『藪をつついて蛇を出す』なんてレベルじゃない大迷惑ですね」

「しかし、その騎士の身体の変化が気になりますな」

「…………あくまで可能性だが、竜の力を取り込んだのかもしれない」


 報告を聞いたナツヒ先輩、私、近衛騎士団長、ハニャス先輩の意見だ。さらにハニャス先輩が続けて自身の推論を述べた。


「ドラゴンを殺して血肉を食す事でその力を宿した竜人になる、というのが宮廷魔術師の古い文献にあったと思う。もしそんな事をしたら竜は激怒するだろうね」


 さすがに宮廷魔術師、こういうところは博識だ。


「他にも問題がありますね。レクサス騎士団は戦功を焦り住民への被害もお構いなしに竜を追っているとの報告もあります。さらに幼いセルシオ公爵自身も被害に遭いすでに他界したとのうわさもあります」


 近衛騎士団長の説明にウンザリしてきた。誰だよドラゴンにちょっかいかけるような馬鹿者はっ!


「とにかく今後の方針を決めましょう」


 とは近衛騎士団長の言葉。この場での最高意思決定権はこの人にある。次が私、それからハニャス先輩、ナツヒ先輩の順だ。決定権を持つ人が指揮を取れなくなった場合に現場が混乱しないようにあらかじめ順序を決めてあった。混成部隊だからね。こういうところも大事だ。


 まず一番大切なのがここの拠点防衛と継戦能力を考えて作物の作成や負傷者の回復役、これは魔道騎士団で受け持つ事になった。次に被災住民の保護、こっちはナツヒ先輩たち神官騎士に任せる事になった。治癒魔法とか絶対に必要だから順当だろう。それからセルシオ公爵の安否確認。そこまで済んでからようやく火竜対策になる。


 魔道騎士団はこの拠点でお留守番なので、その間に私とハニャス先輩で火竜対策も練っておく事になりそれぞれに行動を開始した。



「竜、しかも古い竜っていうのは本来は人間よりもよっぽど深い知性と理性そして洞察力を備えているはずなんだ。当たり構わず暴れるっていうのは理性を失うほど怒り心頭と思うべきだろうね」


 魔人騒ぎの時に聞いた鈴木さんの乙ゲーシナリオの中にはヒロインが竜を調伏する話があったはずだ。


「その竜を説得することは可能なんでしょうか?」

「普通の人間じゃ無理だろうね。竜と人じゃあ、人と虫ほども存在の大きさが違う。エリザベス嬢は虫から説得されて応じるかい?」


 それはあり得ないなあ。


「今の状態は、虫に刺された人間が腹を立てて部屋の中が滅茶苦茶になるのも構わずに虫を潰そうとしてる、って感じだと思う。これをなだめて落ち着かせるのは虫では無理だけど他の冷静な人間なら可能かもしれないね」


 あ、なんか先輩の言いたい事が分かっちゃった。


「つまり女神リザなら交渉の余地がある、と?」

「毎度、エリザベス嬢にばかり負担をかけて申し訳ないと思うけど。竜との全面戦争になれば国土の多くが焼け野原になるだろう。その前に女神様の説得で帰ってもらうことができたらベストだね。ダメ元でも試してみる価値はあると思う」


 はあ、げんなりする。でもやるしかないんだ。



反応があると励みになります。よろしければリアクションや感想等いただけると嬉しいです。

これからもお付き合いいただければ幸いです。

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