40「中学校って結構ファンタジーじゃね?」①
夏樹は、疲れた顔をして教室にいた。
クラスメイトたちが、「え? 由良がいるんだけど!?」と空から槍が降ってくるんじゃないかと怯えたり、「あ、つちのこだ!」とUMA扱いをしたりして、夏樹の存在に驚くと、涙が溢れてきた。
(体感的には数ヶ月学校に来てない感じだけど、数日じゃん! 異世界に召喚される前だってサボるよりも、ちゃんと学校に来ていたほうが多かったのに! ひどい! こんなクラスで勉強なんてできない! 俺はもう帰ってやる!)
涙を堪えた夏樹が立ちあがろうとした時、「学校の神」こと萌乃萌葱が勢いよく教室に飛び込んできた。
「よし! ホームルームを始めるぞ! 今日は転校生を――」
(転校生?)
「特に紹介することはない!」
「しないんかーい!」
「由良! そんなはしゃぐな!」
「はしゃいでないよ!? そうじゃなくて、転校生がいないのになんで転校生がいるみたいな前振りしたの? おかしくない? あれ? どうしてみなさん、由良さぁ、みたいな顔をしてやれやれって海外の方みたいなジェスチャーしているの!?」
夏樹の隣に座る男子生徒が、苦笑して夏樹に声をかけてくれる。
「そういえば、由良は萌え萌え先生は初めてだよな」
「……えっと、ミッシェルくん」
「片岡だよ! どこから来たんだよ、ミッシェルって!?」
「あ、そうそう、片岡くんだったね。ごめんごめん」
「まあ、いいけどさ」
「い、いいんだ。ところで萌え萌え先生って、まさかあの先生のこと?」
「そうそう。萌乃萌葱先生だから、萌え萌え先生って。学校の人気先生なんだぞ!」
「あれー? あの先生ってまだ二、三日だよねぇ? もう生徒の心をがっちり掴んじゃったの? すごくね?」
萌葱のような暑苦しいタイプは最近の若者たちと合わないんじゃないのか、と夏樹は首を傾げる。
「最初はちょっと暑苦しい先生だなって、思ったんだけどさ、俺たちのことをちゃんとまっすぐに見てくれるところが嬉しいっていうかなんていうか」
「あー、なるほど」
「そんな先生に想いを寄せる生徒もちらほらいるんだぜ」
「――展開早くない!? 恋の始まりが唐突すぎない!?」
「実を言うと、俺もそんな萌え萌え先生に想いを寄せる一人なんだ」
「唐突すぎるカミングアウトに、動揺を隠しきれないよ!?」
片岡くんはなぜ自分に突然、恋心を明かすのだろうか。
疑問に思うと同時に、彼の隣の席から茶色い髪を伸ばした女子生徒が、瞬きをせずにネイルをほどこした爪を噛みながら、「片岡くんに色目使いやがって、あのくそ教師ゆるさねぇ」とか呟いているのが見えてしまい、夏樹は泣きそうになった。
(怖い! 異世界のやべー奴らよりも怖い! なんでそんな目を血走らせてるの!? 一般人がしていい顔をしていないんですけど、怖いよ! あと、片岡くんも気付こ? 鈍感系主人公なのかな?)
夏樹が学校に来ていなかった間に、複雑な人間模様が出来上がっていたことに驚くしかない。
「由良にさ、恋のアドバイスが欲しいんだよ?」
「お、俺に?」
「だって、めちゃくちゃ美人のお姉さんと一緒にいるところ見たぞ。彼女なんだろ?」
「か、かかかか、彼女とかいないから!」
「そうなの? でも、俺、この間スーパーで……えっと、円さんとか呼ばれている人と夏樹が楽しそうにお買い物しているのを見たんだけど」
「まさかの円ちゃんだった!」
「由良と美人さんから少し離れた場所から、ぐへへへ、と変な笑い方しているポニテ美人がふたりのことを見張っていたのがちょっとホラーだったよ」
「絶対銀子さんだ!」
「なあ、頼むよ。恋愛マスターの由良に、俺の恋の成就を応援して欲しいんだ!」
「片岡くんの目撃した一部始終に、俺が恋愛マスターの要素あった!?」
夏樹は確信した。
――クラスメイトはファンタジーだ。
「こら、そこのふたり! ホームルーム中だぞ! あまりふざけてばかりいると伝説の木の下に呼び出すからな!」
萌葱の言葉に、片岡が頬を赤く染める。クラスメイトも楽しそうに笑った。
夏樹はなんだか異世界に迷い込んだ気持ちになった。
なっちゃん「教室の中がファンタジー!」
小梅さん「その前に、銀子が不審者よろしく目撃されとるんじゃが!」
銀子さん「私は不審者じゃないっす! 男の子と男の子の厚く迸る友情を見守る守護天使っす!」
なっちゃん「意味わかんない! そんな守護天使いねーよ!」
小梅さん「いや、夏樹がそれを言うんかーい!」
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これも応援してくださった読者様のおかげでございます!
カバーイラストはやっぱり小梅さんがセンターを飾り、なんとついにマモン氏もイラストに! ていうか、カバーにいます!
他にもサタンさん、春子マッマ、アルフォンスさん、蓮くんも描き下ろしていただいておりますのでお楽しみに!
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