27「マレーさんが帰るんじゃね?」
インフルエンザのため土日の二回更新をお休みさせていただきます。
「杏!」
「あ、一登」
ゴッドとリリスに挨拶をした夏樹たちは、喫茶店を出た。
すると、喫茶店の前には制服姿の杏が不安そうな顔をして待っていた。
彼女がちゃんと目覚めたことを確認すると、一登が声を弾ませて駆け寄る。
「よかった。目を覚ましたんだね」
「……うん。みんなのおかげだよ」
杏は夏樹たちに向かい、深く頭を下げた。
「今までごめんなさい!」
しっかりした声で、杏は謝罪した。
彼女の声からは反省と後悔が伝わってくる。
夢の中でも謝ってもらったので、もうとやかく言うつもりはない。
「――もう、いいよ」
許す、とは言えなかったが、夢の中よりも柔らかい声が出た気がする。
「もう十分に謝ってもらったから、いいよ」
「……お兄ちゃん……ありがとう」
夏樹の背を小梅と銀子が軽く叩いてくれた。
もうこれでいい。
彼女は反省した。
変わったとも聞いた。
ならば、今後の行動次第だ。
夏樹が関わるかどうかは別として、今まで気にかけていた一登や、父親である誠司が悲しまなければそれでいい。
「んじゃ、帰りますか! 早く誠司さんを安心させてあげようぜ!」
夏樹は明るい声を出す。
もう暗い話も、謝罪も終わりだ。
「――いや、待つんじゃ」
「小梅ちゃん?」
このまま誠司さんのところに杏を連れて行こうとしたが、小梅が待ったをかける。
杏を含めてみんなが小梅に注目する。
「――辻褄合わせをせんとあかんじゃろう。一応は、まる一日行方がわからんかったんじゃ。俺様たちがどこで見つけたとか、どこにおったとか、話を合わせておかんと不審に思われてしまうじゃろ」
「あ、そうだった。じゃあ、とりあえずガープさんが誘拐犯ってことで、警察に自首するところから始めようぜ」
「ちょぉおおおおおおおおおおおおっ!?」
「なにびっくりしてるの? あんたらがこの子を異世界に連れて行ったんじゃねえか」
「そうだけどさぁ! 一番の責任は絶望の神だろ!」
「あいつ死んじゃったじゃん!」
「そうだけどぉ! それで俺なのぉ!?」
ガープは泣きそうな顔をしていた。
確かに元凶のひとりではあるが、一番悪い絶望の神の代わりは嫌なようだ。
「待て、由良。誘拐だと話が大きくなっちまう」
「千手さんはそう言うけど、じゃあどうするの?」
「普通に、ファミレスにいたとかでいいだろ」
「それだぁああああああああああああああああ!」
たまに思うのだが、千手は天才ではないだろうか。
夏樹は尊敬の念を千手に向けた。
「あの、警察官として言わせてもらうっすけど、未成年がファミレスにずっといたら店員さんが声をかけなきゃいけないっすから、それはそれで揉める気がするっすけど」
「この現代社会でそんな親切な人がいるだろうか! ――いや、いる! いるだろうけど! 細えことはいんだよ! 誠司さんに説明するだけだから!」
「……まあ、誘拐よりはマシっすけど」
「そこを銀子さんが見つけて保護したってことで、オーケーじゃん! んで、一登たちが合流したってことでさ!」
「それで大丈夫っすかね?」
銀子が杏を伺う。
杏は、頷いた。
「はい。ファミレスにはたまにいたことあるし。夜でも平気なところもあったし」
「……個人的には言いたいことはあるっすけど、まあよしとしまっす」
話を聞く限り問題はない。
おかしなところにいたと言うよりも、誠司は安心するだろう。
「話がまとまったようなのねん。獏はそろそろ行くのねん」
「――マレーさん」
「また会う日があれば嬉しいのねん。ガープちんは、口は悪いけど面倒見のいい魔族だから仲良くしてあげてほしいのねん」
「……マレーさんがそういのなら善処します!」
「ありがとうねん。じゃあ、またなのねん!」
マレーさんはハットを軽く持ち上げると、夏樹たちに別れのあいさつをした。
マレーさんは鞄から茶色い番傘を取り出し広げると、彼の身体がふよふよと浮かんでいく。
「マレーさん! ありがとうございました!」
「――ありがとうございました!」
「またなのねん」
手を振るマレーさんを見送り、夏樹たちは誠司と春子に連絡をして杏が見つかったことを報告をした。




