24「謝罪の時間じゃね?」③
「もう、勘弁してくださいっす」
そう言い残して、銀子はその場に倒れた。
「え?」
一生懸命に謝罪していた杏は、途中の銀子の苦しみに気づいていなかったようで困惑した顔をしている。
「……銀子さんは大人だから許してくれるってさ」
夏樹が一応フォローを入れると、杏はほっとした顔をする。
そして、千手に顔を向けた。
「続けちゃうの?」
「う、うん。ちゃんと謝らなといけないと思って」
「いいことだと思うよ。いいことなんだけど、ねえ?」
夏樹ははっきり言っていいものかと悩み一登とガープに振る。
しかし、二人とも気まずい顔をして言葉に悩んでいる。
一拍置いて、まるで示し合わせたように一登とガープが親指を立てた。
「がんばれ、杏!」
「その意気だぜ!」
「……こ、こいつらも大概だな」
杏の気持ちを汲んだのか、止められないと諦めたのか、一登とガープはむしろ彼女を応援しはじめてしまう。
夏樹は千手に手を合わせた。
(って言っても、銀子さんだってこの辺に住んでいたから目撃情報で悪口書かれただけで、千手さんは接点ないんじゃないかなって思うんだけど、どうなんだろう?)
こんなことを言ったら怒られるかもしれないけど、杏が千手に対してどんな悪口をSNSに書いたのか気になってしまった。
「――七森千手さん」
「お、おう。ていうか、俺の名前もちゃんと知ってんのな」
「はい。調べました」
「……う、うん。すごいね」
「ありがとうございます! でも、杏は七森さんの悪口もたくさんSNSに書いてしまったんです」
「ま、まあ、仕方がないさ。青山と同じように写真をアップしたわけじゃないんだろ?」
「は、はい。それはもちろんです」
「なら、とやかく言うつもりはねえよ。綾川は子供だ。間違いに気づけば直せばいい。俺からはそれだけだ」
「――っ、ありがとうございます。杏、七森さんのこと悪く言ったのに、こんなにいい人だったなんて」
「ち、ちなみに、どんなことを書いたのか後学のために教えてくれねえかな?」
「いいんですか?」
「ああ。怒ったりもしないから、教えてくれ」
ごくり、と夏樹たちが息を呑んだ。
杏が恐る恐る口を開く。
「――夜なのにサングラスかけて気取ってんじゃねーよ、ヤンキーかよってSNSで書いちゃいました! ごめんなさい!」
「――ぐはっ」
千手は胸を押さえ、よろめいた。
「ダーリン!?」
虎童子が千手を支える。
「う、うん。そうだな。そう見えるのは仕方がねえ。だけどさ、一応ね、俺のサングラスには術が施してあって、俺の目が暴走しないように」
「あー、はい」
千手は一応、サングラスには魔眼を抑えるための術が施してあることを説明したのだが、杏の顔が反省からちょっと生暖かくなった。
「待て、勘違いしているだろ。俺は厨二病じゃねえからな! 魔眼持ちなんだよ!」
「わ、わかってます! 杏、変な勘違いはしていません! 七森さんは魔眼持ちです!」
「お、おい、待て、待ってくれ。マジでさ、その顔は覚えがあるぞ。由良が俺を厨二病扱いした時と同じ顔してやがる。あれ? 異世界で俺の戦い見てなかった? ちゃんと魔眼使っていたんだけど」
「だ、大丈夫です! 杏もそういうの好きです!」
「だからね!」
「お兄ちゃんも一登も、前、意味もなく腕に包帯とか巻いてたの知ってますから、気にしません! 男の子ってそういうものって知ってます!」
「理解が深くて逆に苦しい!」
「ていうか、飛び火した!」
「なんで知ってるの!?」
千手への謝罪から、夏樹と一登の黒歴史に飛び火してしまった。
若気の至りである。
たまたま家にあった包帯を一登と一緒に腕に巻き、「くっ、封印されし力が」とか叫んだ記憶はある。
だが、まさか杏に見られていたとは思わなかった。
「――学校の屋上でやるんじゃなかった」
「――本当だね」
夏樹と一登もその場に倒れた。




