23「謝罪の時間じゃね?」②
ふう、と夏樹は大きく息を吐いた。
そんな夏樹の肩を、千手が叩く。
(よく頑張ったな)
口パクだったが言ってくれたことはわかった。
夏樹は頷く。
小梅と銀子が親指を立ててくれている。
ふたりにも頷いた。
「……あと、三人にも謝罪させてください」
「俺様?」
「私っすか?」
「俺も、か?」
「は、はい」
杏は、夏樹に続き小梅と銀子、そして千手に向き直った。
小梅と銀子はわかる。
夏樹の近くにいる親しい女性だ。
杏が何かしら思うことがあっても仕方がないことだ。
実際、夏樹のもとを押しかけた際に顔を合わせたこともあった。
ただ、謝罪するほどのことをされた記憶が本人たちにはないので不思議そうだ。
特に千手は、まるで心当たりがない。
三人が、はて、と首を傾げると、杏が頭を下げて謝罪を始めた。
「青山銀子さん……、SNSにブスって書いてごめんなさい! 写真とかはアップしてないんですけど、とにかくブスって書きました!」
「……ま、まあ、自分は大人っすから、そのくらいじゃ怒らないっすよ。写真とかアップされていたら話は違ったかもしれないっすけど、直接何かを言われたわけじゃないっすからね」
大人の対応をする銀子だが、ちょっと頬が引き攣っているように見えた。
まさか銀子も、直接「SNSにブスって書いた」などと言われるとは思ってもいなかっただろう。
「他にも」
「まだあるっすか?」
「部活の後輩キャラみたいな口調がうざいとか」
「ぐはっ」
「毎日酒屋にいるとか」
「ぶほっ」
「ビールしか買わないならスーパーでいいじゃん、とか」
「ぼひひっ」
「ちょ、やめてあげて! 銀子さんをこれ以上いじめないで!」
謝罪されているはずなのに、確実にダメージを喰らってしまう銀子を見ていられず夏樹が割って入った。
「あ、ごめんなさい。とにかく悪口をたくさん書いてしまいました」
「……い、いいえ、いいっすよ。この喋り方も、昔、キャラ付けしたのが癖になってしまっただけっすし、たまに自分でも痛いなぁって思うこともあるっすから。お酒屋さんも、いいお酒を眺めてビールしか買わないって嫌な客っすよね。で、でも、たまに良いお酒も買うんすよ?」
「銀子さん!? 自虐しなくていいから! なんかせっかく謝ってくれたのに、気まずくなっちゃうんですけど! これ誰が責任取るんですか、やだー!」
もう聞いていられない、と夏樹が泣きそうになる。
杏は懸命に謝罪をしているようだが、銀子は辛そうだ。
なんとか大人としての体面を保とうとしているが、限界に近いようだ。
「――ぶ、ぶふ」
「……小梅ちゃん」
小梅は口を抑えて笑うのを堪えている。
いつもだったら大爆笑だっただろうが、杏が謝罪として口にしているので我慢しているらしい。
それでも声は漏れてしまっているが。
一登とガープは「うわぁ」という顔をしており、虎童子も「まあ確かに口調は後輩キャラだな」と納得している。
マレーさんは茶の間のテーブルの前に腰を下ろし、マイペースにお茶を飲んでいた。
そして、千手は、
「まさか、これを俺もやられるのか?」
杏の謝罪にちょっと怯えていた。




