間話「お正月でまもんまもんじゃね?」③
「周平たちは少し遅くなるそうだ」
「この雪ですまもんまもん」
普段はバイクの周平たちも、さすがに雪の中では歩きだ。
車の免許を春になったら取得すると言ったので、しばらくは大変だろう。
「無理して挨拶にこなくて良いって言ったんだけどな」
「周平たちはさまたん様に感謝しているのでまもんまもん。正月の挨拶とはいえ、きちんと顔を見て言いたいのでまもんまもん」
「そういうものかね」
さまたんは少し照れくさそうに頬をかいた。
モハマッドくんは、少し先にあるアパートでぬくぬくしているだろう。
ローレルくんは、奥さんと一緒に近くの民家を買って暮らしているが、手入れをしなければならないところがあると言っていたので、その相談をしているのか、奥さんと仲良くお餅でも食べているのか。
「そういえば、さまたん様と初めて会ったのもこんな雪の日でしたまもんまもん」
「ちげーよ。なんかしんみり回想しようとしているところ悪いんだけど、初めて会ったのは魔界の桜が満開に咲いている春だからな!」
「………………まもん」
「だから、まもんは万能の言葉じゃねえから!」
息を切らせたさまたんだったが、マモンのペースに乗せられてばかりも嫌なので、昨年末に煮ておいたあずきを使ってお汁粉を作る。
「またお餅でまもんまもん? しかも、お砂糖をそんなにいれてまもん、太りまもんまもん?」
「わかってないな、マモン。正月はな、食べすぎて太るまでが正月なんだよ!」
「――ま、もん?」
「そういえば、おしるこって食べたことなかったよな。さまたん特製おしるこを食わせてやる! 待ってろ!」
しばらくして、動画編集をしていたマモンの前にさまたん特製のおしるこが置かれた。
お椀の中には、よく煮て砂糖を馴染ませた小豆と、いただきものの甘く煮た栗と、焼いた餅を入れた湯気の立つおしるこがあった。
マモンの鼻腔を、小豆の優しい香りがくすぐる。
「――さ、お食べよ!」
「……いただきまもんまもん。――っ、これは!」
「うまいだろ?」
「あずきの優しい風味と、くどくないさっぱりとした甘さ! ほどよく塩気があるので、飽きない味でまもんまもん! 栗の甘露煮は煮崩れしていないのに口の中でほろほろまもんまもんと! 何よりも、お餅があずきと絡み合うことで絶妙なハーモニーを奏でているでまもんまもん! 嗚呼、美味しいまもんまもん!」
「いや、食レポはいいよ。なんか微妙だし」
「まもん!?」
結局、さまたんはおしるこにおもちを追加し、まもんもおかわりをした。
「ふう。温まった、温まった! お、午後から雪が止むみたいだし、初詣にでも行くか?」
「――さまたん様」
「お、おう?」
「さまたん様は、一度は魔界の覇者に王手をかけた方! そんなさまたん様が、いくら隠居しているという身であっても、さすがに神社へのお参りはいかがなものかと」
「気にしなくてもいいって。近所で祀られている神は土地神だし、たまに会って挨拶する仲だし?」
「だからとはいえ、魔族としてのまもんまもんなプライドまでお捨てにならずとも! ――あ」
マモンがさまたんに苦言を呈していると、彼のスマホがなる。
「亜子さんから初詣のお誘いがあったので、午後はちょっとデートしてきますね」
「……お前、魔族としてのプライドどこいった?」
「まもん? プライド? ああ、年末の燃えるゴミの日に出してしまいまもんまもん!」
「お前……都合良すぎじゃね!?」
――お正月もやっぱりさまたんとまもんは平和だった。




