エピローグ「佐渡家はやっぱり愉快なんじゃね?」②
「そんなに驚くことはないだろう。不可思議なことは、いつだって誰にでも起きる。それを本当の意味で理解できるかどうかは、その人次第だがね。ファンタジーといえば、私とお母さんの知り合いの由良さんという看護師さんがいるんだが、学生時代からもうやることなすことファンタジーでね。青山くんと一緒になんどか巻き込まれたことがあったものだよ」
父の話す看護師さんに、祐介は心当たりがあった。
「絶対っ、夏樹くんのお母さんだ!」
「そういえば、祐介は春子さんの息子さんと友人だったね」
「友人? ――親友だよ! 結婚式にはスピーチしてもらうくらいの、ね!」
キメ顔をする祐介に、母が咳払いをした。
「こっちのことはいいから、それで祐介はどうやってファンタジーに足を突っ込んだの?」
母の疑問は最もだ。
まず、最初から話をしなければならない。
両親に話すには抵抗があることもあるが、ファンタジーの住人ならばきちんと話すべきだと祐介は考えた。
「――実は、僕は異世界に勇者として召喚されて酷い目にあって」
勇者として召喚されたが、創作物のような夢と希望など微塵もなく、尊厳が踏み躙られたこと。
自暴自棄になり死んだところ、戻ってくることができた。
しかし、現実だか夢だったのかわからず、夢にしてはリアルで、現実としては受け入れ難い。
何より人が怖かった。
そのせいで引きこもってしまった。
同じ境遇の夏樹が会いにきてくれるまで、自分がおかしくなってしまったのだと思っていたのだ。
「――まさか、そんなことが。許せないわ」
「……疑ってはいないが、事実だとしたら許せないことだ。人を、私の息子をなんだと思っている!」
両親の怒りは嬉しかった。
父と母を悲しませることは本意ではないが、家族に愛されていることは素直に嬉しいのだ。
「夏樹くんと出会って救われたんだ。千手さんや征四郎さん、義政先生も、一登くんも支えてくれるし。出会った仲間たちはみんないい人たちだよ」
そして、夏樹と共に二度目の異世界に向かった。
そこで過去と決別すべく戦い、勝利して帰ってきたのだ。
「向こうの世界で僕を助けてくれた恩人であり、支えてくれたのがソーニャたんさ」
「大袈裟だな、私は……まあ、その、お前が気に入ったから、さ」
「……ほう」
「あらあら、まあまあ」
祐介のまっすぐな好意と、ソーニャの恥ずかしそうな仕草が、怒りを抱いていた両親をほっこりさせてくれた。
「ソーニャたんは魔王さんのお母さんなんだ。ダークエルフで、メイドさんで、諜報員で、なんでもできる素敵な女性さ!」
祐介の両親は口にこそしなかったが、ソーニャが子持ちであることに驚きを隠せなかった。
息子の恋人が子持ちであることに驚いたのではなく、この幼い外見の少女が子持ちであることに単純にびっくりしたのだ。
まさか孫までいるとは思うまい。
「――ただいま! あっ、兄貴の匂いがする! ようやく帰ってきたのね! べ、別に心配とかしてないし!」
ツンデレをしながら、祐介の妹佐渡ひなたがリビングに入ってくる。
「ただいま、ひなた」
「おかえり。――って、誰、そのダークエルフみたいな幼女は?」
ソーニャの姿を見つけて、ひなたが首を傾げる。
祐介は、満面の笑みでソーニャのことを紹介した。
「――紹介するよ! 僕の婚約者さ!」
「ほ」
「ほ?」
「ほんげぇええええええええええええええええええええええ!?」
ひなたはあまりにも衝撃だったのか、祐介と似たような奇声を発した。




