エピローグ「佐渡家はやっぱり愉快なんじゃね?」②
「取り乱して申し訳ない。ご挨拶が遅くなりました。私は祐介の父、佐渡隆と申します」
「お恥ずかしい姿を見せてしまってごめんなさい。祐介の母、優香です」
リビングに通されてテーブルを挟んでソファーに座ると、自己紹介が始まった。
「ご丁寧にありがとうございます。私は、ソーニャ・シラーと申します」
改めて、ソーニャは祐介の両親に名乗り、お辞儀をした。
丁寧な仕草は、どこか気品があった。
「シラーさん、その、単刀直入に聞くが……不愉快な思いをさせるかもしれない。いいかな?」
「なんでもお聞きください」
「祐介に拐われたようだが、ちゃんとお家に帰すので警察だけは勘弁してください。どうか、示談で」
「ちょっとお父さん!? まるで僕が犯罪を犯したように!」
「黙れ! 昔から、趣味がぶっ飛んでいる息子だと微笑ましく思っていたが、まさか褐色幼女を攫ってくるとは思わなかったぞ! この親不孝者! しかも、耳まで尖らせて! なんてひどいことを!」
「ソーニャたんのお耳は本物だよ!」
「……この愚息め。年端もいかぬ少女を、たん、付けで呼ぶとは……なんと恥ずかしい!」
「本人の承諾はもらってるもん!」
「ええいっ、可愛らしくいっても駄目だ! 情緒不安定なお前の言葉をどこまで信じていいのか悩ましい!」
「そ、それは……」
祐介は、異世界に召喚され向こうで数年のひどい日々を送り、帰ってきた。
地球では一瞬の出来事だったが、経験した祐介は大きく混乱し、恐怖した。
夏樹が会いにきてくれたことで、同じ境遇の人間がいることを知り、落ち着くことができた。
少なくとも夢ではないと理解できたのだ。
ただ、夏樹と出会うまで家族にはたくさん心配をかけていた。
その自覚がある。情緒もその時は不安定だったのは間違いない。
「お前がシラーさんを解放しないというのなら、後輩の青山くんに電話して然るべき対処をとってもある」
「……青山?」
「私の後輩で、向島市の警察署長を務めている。昔はやんちゃだったが、今は立派になった。よくお互いに相談をする仲だよ」
「まさかの銀子さんのお父さん!」
「……娘さんとお知り合いか? 世間は狭いな」
「それはこちらのセリフだよ! 銀子さんも、ソーニャたんと仲良しなんだぞ!」
「……つまり?」
「――合法です」
隆は震えた。
息子は今、なんと言った。
合法、だと。
つまり、褐色の尖った耳の幼女は、祐介と関係が許されるとでもいうのか。
「いや、いや、駄目だ。そんなうらやまけしからんことは認められん!」
「……あなた?」
「違うよ、優香。口が滑っただけで、そうじゃない」
慌てて弁解する父を放置して、祐介とソーニャは顔を合わせて頷きあった。
実を言うと、ふたりは異世界のことを言おうと決めていたのだ。
祐介も少々問題のある子だが、常識がないわけではない。
一般人の両親に外見が幼女のソーニャを連れて「結婚します!」と言っても認めてくれるはずがないことは知っている。
ふたりは話し合った結果、嘘をつかずに話をしようと決めたのだ。
その結果、反対されるかもしれないし、正気を疑われるかもしれない。しかし、その時はその時だ。
まずは誠実に話すことにしたのだ。
「あのさ、お父さん、お母さん」
「どうした? 自首するのか?」
「いや、そうじゃなくて、真面目に僕たちの話をとりあえず聞いて欲しいんだ」
祐介とソーニャの真剣な瞳に、隆と優香は佇まいを整えた。
「……わかった、そこまで言うのなら聞こう」
「ありがとう」
お礼を言った祐介は、緊張しながらも包み隠さず話をした。
「ソーニャたんは、異世界のダークエルフなんだ!」
「それで?」
「それで!? もっと違う反応はないの!? 頭が大丈夫か、とか! 冗談はよせ、とかさ!」
「舐めるな! 私は医者だぞ! ファンタジーが怖くて医者をやっていられるか!」
「えー」
「毎日霊能力者が担ぎ込まれてくるぞ!」
「えぇえええええええええええええええええええええ!?」
「なんなら私もお母さんも、そっち側だ」
「ほんげぇええええええええええええええええええええ!?」




