間話「まもんまもんだってまもんまもんなんじゃね?」
――青森。某所。
「まもんまもん。それじゃあ、マモンたちは寄り合いに行ってきまもんまもん」
割烹着を脱いだマモンが、日本酒の一升瓶を二本持ってサマエルに告げた。
「……寄り合いって、高橋のおじいちゃんたちと飲み会だろ」
サマエルは知っている。
こんな悪人顔のマモンだが、おじいちゃんおばあちゃんおじちゃんおばちゃんウケはものすごくいい。
近所――といっても、一軒一軒に距離があるが、同じ農家や元農家、狩猟をしている方々と定期的に寄り合いと称して飲み会をしていた。
サマエルの畑で働く、日本人と結婚してフランスから移住してきたオーレルと、インドネシアから出稼ぎにきているモハマッド、そして最近では元暴走族総長だった周平と、その仲間で畑でバイトする少年たちも参加している。
「よ・り・あ・い! で、まもんまもん!」
「うぜぇ! まあ、いいけどさ。周平たちには酒を飲ませるなよ!」
「まもん!」
周平たちは良くも悪くも、サマエルとマモンに懐いて影響を受けていた。
根は素直な子たちなので、近所のおじいちゃんおばあちゃんからも好印象だ。
「体力だけはあります!」と言って朝から晩までもりもり働くのだ。
勤勉な者は好かれるのは、ごく自然のことだった。
最近では、動画にも出演したりしているが、彼らは決して驕ることなく堅実に働いている。
散々調子に乗って馬鹿をやったからこそ、地に足をつけて生活をしたいとのことだ。
サマエルとしても応援してあげたい。
少々、周平をはじめ、仲間の少女とラブコメったり、農家のお家のお孫さんやひ孫さんとラブコメったりしているのが気になるが、まあ、いいことだと思いたい。
「もちろん、じゃねえよ! 本当は酒を飲む場に子供を連れていくのもどうかと思うんだけどさぁ!」
「……まもんまもん。かつて魔界の頂点までもう少しだった方とは思えないまもんまもんな控えめなお言葉!」
「いや、大人としてちゃんとしたお言葉だよ!」
「わかっていまもんまもん! 今回は、真面目な話なんでまもんまもん」
「酒飲むのに?」
「飲まなきゃやってられまもんまもんな内容なんでまもんまもん!」
「お。おう?」
マモンの感情の昂りに魔力が揺らぐ。
青森に来てからここまで怒りに震えるマモンを見たことがあったか。
否。
ない。
「なにが、あったんだ?」
サマエルが問うと、マモンは怒りを抑え、悲しそうな顔をした。
「――まもんまもんに対するアンチでまもんまもん」
「それ寄り合いで話す内容!?」
――珍しく青森は平和じゃなかった。




