エピローグ「帰宅じゃね」
「たっだいまー!」
「ただいまなんじゃー!」
「だだいまっす!」
夏樹、小梅、銀子は、体感的には数日ぶりに、地球の時間では一日も経っていない由良家に帰ってきた。
「おかえりー」
「おう、おかえり! うがいと手洗いをちゃんとするんだぞ! もうすぐ春子さんが帰ってくるから晩御飯だ!」
茶の間でテレビを見ているリヴァイアサンことリヴァ子と、台所から顔を出したサタンが変わらない「おかえり」を言ってくれた。
「リヴァ子ちゃんとサタンさんがいることにまったく違和感がなくなっているどころか、帰ってきたなぁって思っちゃう俺って……もう駄目じゃね?」
「残念じゃが、侵略されてしまったんじゃな」
「さすが高位魔族っす! 自分もこっそり、あーっ、帰ってきたっすーって思っちゃったっすよ!」
まだ短い期間しか一緒にいないが、サタンとリヴァ子は気付けば家族になっていた。
母の顔ではなく、ふたりの顔を見て帰宅したことを実感してしまった夏樹は笑うしかない。
「……あれー? 三人だけなのー? 愉快な仲間たちはー?」
「みんなは気を使って、それぞれに行動だよ」
「かずたんも?」
「うん。ご両親の顔を見たいってさ」
「じゃあ、しゃーなーなー」
「しゃーないねー」
さすがに向島愚連隊のメンバーが集まれるほど由良家は広くない。
一登は、杏のことをゴッドが預かってくれたので、一度家に帰って家族の顔を見ることにした。
未だ目を覚さない杏だが、魔力を急激に消費してしまったせいで身体が休眠状態らしい。
命に関わることではないが、自然回復だと時間がかかってしまうらしい。
そこで、ゴッドが預かり、魔力回復をさせてくれると提案してくれた。
そうすれば、夜には回復して目覚めるとのことだ。
杏の父誠司は、彼女の事情を知らず行方がわからないとなっている。
ならば、一刻も早く安心して欲しかったので、ゴッドに杏の回復をお願いしたのだ。
千手は、大人である自分がほいほい中学生の家にいけないと言いながら、早く帰って寝たいと笑い、「お疲れさん」と帰って行った。
その後を虎童子がこっそり着けていったのはご愛嬌だろう。
征四郎と義政も、先日から向島市に来ていることもあり一度家に帰ることにした。
ただ時間がかかってしまうので、ゴッドが転移してくれたので、今はもう家の中だろう。
祐介はソーニャの手を引いて、家に帰って行った。
まず両親に紹介したいらしい。
夏樹たちが止める間もなく走って行ってしまったので、どうしよう、と考えたのだが、どうにかなるだろうと、思考停止してしまった。
ちなみに、笑顔で見守っていたリリスは小梅にそっと「後日、いろいろ聞かせてね」と耳打ちをし、娘を「――ぴっ」と怯えさせていたりもしたが、夏樹は気づかなかったことにした。
円と東雲と鬼姉妹の京都勢も大所帯となってしまったので、千手が利用するホテルを紹介してもらいそちらに移動した。
兄弟で積もる話もあるだろう。
特に茨木童子などの話だ。
鬼姉妹も姉との交流が必要だろう。
東雲と円はしばらく向島市に滞在すると決めており、改めて由良家に挨拶にくると行って別れた。
「――あら、夏樹。小梅ちゃんと銀子ちゃんも帰っていたのね」
「あ、お母さん、ただいまー!」
「春子ママただいまなんじゃ!」
「ただいま帰りましたっす! 春子さんもお帰りなさいっす!」
仕事から帰ってきた母の顔を見て、夏樹は心底安心した。
かつて数年異世界にいた時よりも短い異世界転生だったが、やっぱりこの住み慣れた街が一番だと心底思うのだった。




