間話「新たな勢力じゃね?」
――青森。某所。
「――っ、まもんまもん!」
午前中の畑仕事を終えて、昼休憩をとっていた七つの大罪の魔族であるマモンは、不意に顔を上げた。
「どうしたよ、マモン?」
丸テーブルでパソコンと睨めっこしながらおにぎりを頬張っている魔族サマエルが、画面から視線を外しマモンに尋ねる。
「……まもん……なにやら、まもんまもんに対抗する勢力が現れた気がしてしまいまもん。これが虫の知らせというやつでまもんまもん」
「意味がわかんない!」
つい大きな声を出してしまったサマエルだが、茶の間では畑で働いてくれている従業員たちが食後の昼寝をしていることを思い出し、慌てて口を押さえる。
育ち盛りの少年少女、出稼ぎの大人たちがみんな仲がいいのがサマエルの誇りだ。
なにかと事情を抱える者の面倒を見ることは、サマエルにとって何も苦ではない。むしろ、一番手を焼かされたのがマモンだ。
不良少年や、仕送りが大変で食事を切り詰める人間の面倒を見ることくらい、朝飯前だ。
「お前のせいでつい大きな声を出してしまったじゃないか」
「……理不尽でまもんまもん」
「んで、突然何だっていうんだ? まもんまもんに対抗する勢力っていうのは?」
「やはり気になってしまいまもんまもん?」
「いや、全然」
ずずず、とサマエルは味噌汁を啜る。
なんとも言えない沈黙が生まれてしまった。
「……まもんまもん。さまたん様にはわかりますまい。このマモンのまもんまもんが世界中から愛されていることを! そんなまもんまもんの恩恵に預かろうと第二、第三のまもんまもんが現れても不思議ではないのでまもんまもん」
「いらねーよ、第二、第三のまもんまもんなんて。あと、お前、最近台詞にまもん増えてね?」
「まもんまもん」
「そんなことはありませんよ、みたいに手を振る仕草がなかったら、ただまもんまもん言っているだけだからな! ジェスチャーがあればまもんまもんだけで押し通せると思うなよ!」
最近、なんでも「まもんまもん」と言えばいいと思っている気配があるマモンにサマエルは釘を差す。
「……あの、サマエルさん、マモンさん」
茶の間で眠っていた少年のひとりが起きて、声をかけてきた。
「どうしたの、周平?」
金髪のロン毛の少年は、サマエルがボコして更生させた元暴走族の総長だった子だ。
今は農業に目覚め、近所のおじいちゃんおばあちゃんに可愛がられている。
親と不仲であることから非行に走った経緯を持つ子であるが、仕事はしっかりするし、仲間の面倒見もよく、いずれ独り立ちできるとサマエルは期待している。
「すまない、起こしてしまったまもんまもん」
「あ、いえ。そうじゃなくて、変な夢を見たっていうか」
「変な夢?」
「まもん?」
周平はなぜかマモンを伺いながら、恐る恐る口を開いた。
「マンタに乗った女の子が、ツーブロックの男の子と一緒に――まんたまんたって」
マモンは目をくわっ、と見開き叫んだ。
「Holy shit!」
「いや、そこはちゃんとまもんまもん言えよ」
――青森はやっぱり平和だった?




