29「まんたまんたじゃね?」②
マンタから降りた夏樹が、乗せてもらっていたお礼をして撫でていると、話を終えたのだろう管理者まんたさんと魔王アールウェルスが揃って近づいてきた。
「おまたせまんたまんた!」
「別に問題ないっすよ、まんたまんた!」
「……なんかうざい」
ハイタッチする夏樹とまんたさんに、聖剣さんが顔を顰めた。
「貴殿のことはまんた様より伺った。元いた世界に帰れることも」
「うん」
アールウェルスは夏樹に手を差し出した。
「強き勇者よ。貴殿の戦いが無事に終わることを祈っている」
「ありがとう、アールウェルスさん。俺も魔族たちの解放と、これからを祈っているよ」
差し出された手を取り、握手を交わす。
ふたりは戦ったが、悪い感情はなかった。
仕方がなく戦っただけであるのだから、もう戦う理由がなければ見送るだけだ。
「あ、そうそう。怪我は治してもらえたみたいだけど、剣は戻ってなかったから、よかったらこれをどうぞ」
「――良いのだろうか?」
アイテムボックスから引き抜いたのは、一振りの魔剣だ。
魔王ギーゼラ・シラーの愛剣「常闇の剣」ほどではないが、異世界では業物であったと記憶している。
「私が持っていた剣と同等、いや、それ以上か? このような業物を……本当に良いのか?」
「もちろんだよ! 俺は使わないから、使ってくれる人がいるほうがこの剣も喜ぶと思う」
「ならば、ありがたく頂戴しよう。感謝する」
「うっす!」
嬉しそうな顔をしたアールウェルスは、魔剣を腰に差した。
「代わりに何か貴殿に贈れるものがないか……」
「いいっていいって! お気遣いなく!」
「しかし……そういえば、貴殿はまんた様の使いであるマンタ様に乗っていたな。代わりとは言わぬが、我が愛馬を受け取ってほしい!」
アールウェルスが指を鳴らすと、白馬が駆けてきた。
毛並みの良い、気高き馬だ。
「紹介しよう。いくつもの戦場を共に乗り越えた愛馬パカラッチョーだ」
「パカラッチョーって……アールウェルスさん、ネーミングセンス最高じゃね?」
「よしてくれ、不覚にも照れてしまう」
夏樹はアールウェルスのネーミングセンスに感動しているが、聖剣さんは「え? ダッサ!」と驚き、まんたさんも「うわー」となんとも言えない顔をしている。
何よりもパカラッチョー自身が「ないわー」って感じでめっちゃくちゃ首を横に振っていた。
「でも、いいの?」
「貴殿の力になってくれるだろう」
「――ありがとう」
再び握手を交わす。
「よろしくね、パカラッチョー!」
夏樹が白馬に挨拶すると、パカラッチョーは「にかっ」と歯茎を見せた。
笑ってくれたのだと思う。
「んじゃ、君を元いた世界に送るねー! まんたパワー!」
「まんた様、異世界の勇者のことをお願いしました」
「お任せ、まんたまんた!」
まんたさんを中心に青い円形の光が放たれた。
「じゃあね、アールウェルスさん」
「さらばだ、由良夏樹殿」
お互いに軽く手を振る。
「アールウェルスさんたち魔族さんに河童大神様のご加護がありますように!」
「――――え!? 河童大神って言った!?」
夏樹と聖剣さん、パカラッチョーを淡い光が包むと同時に、マンタさんがこれでもかと目を見開いた。
「え? 知ってる?」
「シラナイヨ! マンタサン、ナニモシラナイヨ! マンタマンタ!」
「そっか、残念」
そんなやりとりをしながら、夏樹たちは消えていった。
――残された魔王アールウェルスは、微笑を浮かべる。
「不思議な少年だった。良き出会いでもあった。彼のような人間ばかりであれば、このような争いが起きなかっただろう」
アールウェルスは、夏樹から譲り受けた魔剣を抜いた。
「彼は彼の戦いに戻った。ならば、私も魔王としてすべきことをしよう! 友から譲り受けたスーパー魔王ブレイドと共に!」




