24「千手さんととらぴーカップルが戦うんじゃね?」①
七森千手は、停止の魔眼を持つ魔眼使いだ。
本来は、強すぎる力を制御できず中途半端な能力でしかなかったが、京都で蘆屋道満によって魔眼を調節されたことで、十全の力を使えるようになった。
しかし、身体への負担は大きい。
頭痛や眩暈からはじまり、霊力の消費が激しいのだ。
対象がやっかいであるほど、代償も負担も大きい。
――ちなみに、どれだけ代償を払っても、負担を強いても、由良夏樹だけは停められない。
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「天眼の神様か。どんな力だかまったく想像もできねえな。ご教授願いたいのは山々だが、俺は人間で、あんたら神にとっては雑魚の雑魚ってわけで――停マリヤガレ」
なにかを言おうとした天眼の神の身体が硬直した。
千手に激しい頭痛が襲うが、許容範囲内だ。
むしろ、頭痛だけで神を停止させることができるのであれば、上等だ。
「丁度いい、攻撃は頼むわ、虎童子」
「…………」
「あの」
「…………」
「…………とらぴー」
呼び方にこだわる虎童子に渋々「とらぴー」と千手が苦い顔をして呼ぶ。
「まっかせろ、ダーリン!」
「面倒臭えな!」
嬉しそうな顔をして地面を蹴った虎童子が、一瞬で天眼の神に肉薄し、彼女の顔面に全力の蹴りを入れた。
虎童子の右足が、天眼の神の左側頭部を砕く。
それだけでは済まさず、虎童子に蹴り飛ばされた天眼の神が地面を大きく跳ねて後方に飛んでいく。
「……知っていたつもりだったんだが、鬼って怖いなぁ」
青ざめた千手は、自分が虎童子の蹴りを喰らえば、吹き飛ぶのではなく胴体と首が千切れ飛ぶだろうと確信した。
「――ダーリンととらぴーのらぶらぶちゅっちゅ蹴り。三ヶ月後、ダーリン……私のお腹に……キック!」
「長えしストーリーが怖えし、んなことならねえし! 由良みたいな技名つけんな!」
「てへぺろ!」
「そんなキャラじゃないだろ、あんた!」
なんでこんなに疲れているんだろう、と千手は嘆息しようとして、できなかった。
「おいおいマジかよ。あの蹴りをもろに喰らって……あー、くそっ、再生能力か。これだから神っていうのは理不尽だな! おい!」
千手の叫び声が木霊している中、虎童子によって蹴り砕かれ吹っ飛ばされた天眼の神が平然と立っていた。
「――神はいつでも理不尽ですよ。そこの鬼の強さも大概ですがね」
傷ひとつない天眼の神は、衣類についた土埃を払いながら戻ってくる。
「では、次は私の番ですね」
そう言い、天眼の神は目を覆う布を剥ぎ取った。
彼女の瞳は、宇宙のように煌めいていた。
「私の天眼は、未来予知。――宣言しましょう、あなたたちの攻撃はもう私には……あら?」
「話が長いっての!」
天眼の神が目を開き千手を見たと同時に、彼女の死角から虎童子が懐に潜り込んでいた。
虎童子が拳を天眼の神の鳩尾に叩き込む。
「くの字」に身体が折れたと同時に、天眼の神の口から血と胃液が吐き出された。
「お、ぇ」
〜〜あとがき〜〜
なっちゃん「タイガーさんセンスあるよ! ナイスタイガー!」
まんたさん「そうかなぁ」
祐介くん「そんなことよりも千手さんがとらぴーとラブコメっててダークサイドに堕ちそう」
書籍版『異世界から帰還したら地球もかなりファンタジーでした。あと、負けヒロインどもこっち見んな。』が発売となりました!
小梅さんがセンターを飾る素敵なイラスト、挿絵では夏樹くんがちゃんと主人公している場面もございます!
ぜひお手に取っていただけますと幸いです! よろしくお願いいたします!




