22「小梅ちゃんが戦うんじゃね?」①
「ぜーっぜっぜっぜっぜっぜ! 心地いい! 綾川杏くんの絶望のおかげで、俺は気分が良くなった!」
「なんちゅー悪趣味じゃ。あの小娘には戦う意思がないじゃろうに」
なぜ杏から敵意がなくなっているのか不明だが、そんな彼女をわざわざ利用したことに小梅たちは怒りを覚えていた。
関係の薄い小梅たちはいい。だが、ずっと気にかけていた一登にとって、杏と戦わせると言うのは酷だ。
杏の意思で戦いを選んでいたというのなら、一登の意思を尊重して彼女を止めるために戦わせただろう。
しかし、戦う意思はなく、操られて戦わされている杏と一登をぶつけるのは違う。
「おどれ……戦いにも最低限の礼儀っちゅーもんがあるじゃろう! ああん?」
「ぜっぜっぜっぜっぜ! 神はいつだって理不尽なの、さ!」
「三下の神が偉そうに」
「ぜっぜっぜ! 神になれるほどの力を持ちながら、ただの天使でいることを選んだ君には俺の気持ちなどわからんよ!」
「わかりたくないわい!」
小梅の腕が掲げられ、光った。
次の瞬間、絶望の神の右肩を中心の円形の穴が開く。
腕がちぎれ飛び、胸の大半、顔の半分が抉り取られた。
――だが、絶望の神は生きていた。
「素晴らしい力だ、小梅・ルシファー! 君は普段こそパワータイプを気取っているが、実際はテクニックタイプだ! 速く、鋭く、躊躇いのない攻撃は君のお父上を思い出す!」
再び小梅の腕が光る。
今度は、頭部が消し飛んだ。
「――御託はええんじゃ」
純白の翼を広げた小梅の攻撃を、絶望の神は避けることさえできずに直撃を食らう。
小梅の攻撃は、速い。
殺すつもりで攻撃をするのなら、今のようにこの場を支配する絶望の神でも抵抗できない。
しかし、殺傷能力が低い。
否、決して力が弱いわけではないが、最高火力がやや低いのだ。
――だが、それはあくまでも速度を重視した場合だ。
そこそこの速度で攻撃をするのならば、攻撃力に全振りできる。
小梅の性格もあるのだが、器用にいいとこ取りができないだけだ。
「死んどらんじゃろ。早う、再生でもなんでもせんかい。おどれが死ぬまで何度でも攻撃してやるんじゃ、光栄に思い咽び泣いて死ね」
絶望の神の肉体はゆるりと再生している。
まるで余裕があるようにも見えた。
この状況で追撃も可能だが、小梅はあえてしない。
「銀子、この腐れ絶望の神は俺様に任せるんじゃ」
「し、しかしっすね、小梅さん」
「安心せい、夏樹が出る幕でもないんじゃ。俺様がさくっと殺しておくんで、そっちは任せたんじゃ」
すでに門の神と、絶望の神の手下である神や魔が動き出している。
銀子は唇を噛んで、小梅に託した。
「小梅さんに任せるっす! 腐れ絶望の神をぶっ殺したら、秘蔵のお酒で乾杯しましょう!」
「――おう!」
小梅と銀子は拳をぶつけ合う。
お互いの勝利を願い、頷く。
「さーて、はよ回復せんかい。なーにもったいつけとるんじゃ?」
「ぜっぜっぜっぜっぜ、今生の別れに水を差さないように気を使ったのだが、ね!」
銀子の背中を見送り、小梅は笑う。
子供のような屈託のない笑みだった。
「おーどーれーはばっかじゃのー!」
「ほう?」
「俺様は、周囲に気を遣わんほうが強いんじゃよ!」
「それはそれはなかなかな絶望的だ、ね!」
小梅が翼を広げ、絶望の神に肉薄した。




