20「新たな出会いはワクワクするんじゃね?」②
「いやー、君っておもしろいねー。でも、とりあえず真面目に話しよっか?」
そう言って少女が指を鳴らすと、どこからともなくマンタがもう一匹現れる。
マンタさんは、ヒレを器用に使い「乗りな」とジェスチャーを取った。
「えー、座布団代わりなのー?」
「ヒラメさん呼んであげてもいいけど?」
「そんな要求してないからね!」
とりあえずせっかくなのでお言葉に甘えてマンタさんの上に乗って正座をした。
「ちょっと、口周り拭かせてね」
アイテムボックスからミネラルウォーターとタオルを取り出し、血まみれの口と口周りを綺麗にする。
「はい。おまたせ!」
「……えっと、君ってちょっとおかしいって言われたことない?」
「ないよ! 生まれてから一度もおかしいなんて言われたことないよ!」
「そっかー。最近の子ってこんな感じーかー。私も歳ってことかなぁ」
なにやらジェネレーションギャップを覚えているような少女の姿は、よく見ると――スクール水着だった。
夏樹は突っ込もうとして我慢した。
話が進まないので、ぐっと堪える。
勇者じゃなかったらきっと我慢できなかっただろう。
「とりあえず、神様ってことでオーケー?」
「ノォオオオオオオオオオオオオオオオ!」
「全力で否定されちゃった!?」
「私、神様じゃないですー! あくまでも管理者さんですー! 中間管理職ですー!」
「急にしょぼくなった気がする」
「しょぼいとか言うな! こっちは、何百、何千って世界を運営しているんだぞ! 基本的にノータッチが原則なのに、ちょっと問題があればすぐに私のせいにされるんだ! おかげで酒の量が増えたよ!」
「……小さいのにお酒飲んじゃだめだよ?」
「これでも五千年くらい生きてるから!」
「規模がでっかくてわかんない!」
少女を探ってみるが「なにも感じない」。
本当に目の前に少女がいるのかさえ怪しい。
夢でも見ているのではないか。
幻でも見せられてるのではないか。
悪い宇宙人に攫われて脳にチップを埋め込まれているのではないか。
数々の憶測が脳を駆け巡る。
が、どうしても答えが出ないので気にしないことにした。
「まあいいや!」
「そこで割り切れるのがすごいね!」
「――勇者ですから! きりっ」
「自分で言っちゃうタイプかー! 嫌いじゃないよ! んで、真面目な話をちゃんとしたいんだけど」
「俺もさっきそういったけどね!」
マンタの尾が「まあまあ」と夏樹の肩を叩く。
「それで、なんで時間止めたの?」
「君が殺そうとした魔王アールウェルスはこの世界の救世主となる男なんだよ」
「ほーん」
「反応うっす!」
「で?」
「調子狂うなぁ。彼はときどき生まれる特異点なんだよ。彼の行動次第で、この世界の行末がきまるの! 今はいい感じに進んでいるのに、君が急にひょっこり現れて殺そうとするからぼっくりなんだよ!」
「そりゃこっちのセリフだよ! 来たくもない世界に呼ばれて、せっかく紳士と出会ったのに殺さなくちゃいけなくて……悲しい!」
「……殺さなきゃいけないっていうのがよくわからないんだけど。んで、どうして君はこの世界にいるの?」
「見てたんじゃないの?」
「だーかーらー、始終見張っている訳じゃないから! やべーことになったときだけ反応できるようにしてあるの!」
息を切らした少女は、夏樹に改めて視線を向けた。
「この世界じゃないのは間違いないよね?」
「うん」
「だよね。私の管理する世界に君みたいな「壊れかけている」人間はいないもん」
「……なんか失礼しちゃうわ!」
「うん。君がそうやって振る舞うことにとやかく言うつもりはないんだけど……辛い時は辛いって言わないと周りには伝わらないからね」
少女の言葉に、夏樹は笑顔を浮かべるだけだった。
「ま、いいよ。今は、そこじゃない。君はどうやってこの世界に来たの?」
「えっと、門の神っていう奴に――」
「またあの野郎かぁああああああああああああああああああああああ!」
――どうやらご存知のようだった。




