19「新たな出会いはわくわくするんじゃね?」①
(――な……身体が動かない? 聖剣さん? 聖剣さん!)
聖剣さんから返事がなく、夏樹は焦る。
自分ではなく、時間が止まったのだと理解するまでに時間を必要とした。
「あー、あー! もう! なんでこんなことになるんだよー! せっかくまともな世界になると思っていたのに、せっかく見守っていたのに!」
少女の声には苛立ちが宿っていた。
「――ん? あ、お前、なんでこの空間で意識があるんだよ! ありえないだよ! ちょっとたんま! まんた! 時間ごと止めたんだぞ! 意識があるっておかしいんだよ! マンタが空を飛ぶくらいおかしいんだよ!」
(例えがわかんねー)
わからないことが多いが、姿の見えぬ少女の声がこの世界を言葉通りに止めたのだろう。
その理由は、おそらく夏樹がアールウェルスを殺そうとしたからだ。
「ぐ、あ」
「え? 動くの!? 嘘ー!?」
なんとか身体を動かそうと力を振り絞るが、指がぴくりと動かすのが精一杯。
しかし、少女の声は心底驚いた声を出した。
「ちょ、たんまたんま! まんたまんた! この空間で無理やり動こうとすると、身体がバラバラになるからね! 別に君に死んで欲しい訳じゃないんだから、無理をしないでよ!」
少女の声から嘘を感じなかったので、夏樹は抵抗をやめた。
すると、安堵するような息を吐く音が聞こえる。
「ちょっと君と話をしたいから動けるようにするけど、絶対に魔王アールウェルスを殺しちゃ駄目だからね! わかったら、瞬きを二十回して!」
不思議と瞼が動いたので、瞬きを十九回した。
「あ、あの、もう一回は? ちょ、ちょっと、なんでバチバチ瞬きするの! 何回するの!?」
夏樹のお茶目な反応に、少女の声は心底驚いているようだった。
「はぁ……もういいや。なんかこういう子って絶対私の思った通りに動いてくれないから、とりあえず動けるようにするね。――はい! まーんーたー!」
少女の気の抜けた声が響くと同時に、夏樹の身体が動いた。
刹那、夏樹は聖剣を声のする方に振るう。
「こわ! 最近の子ってこわ! まんたさんもぼっくり!」
しかし、聖剣は声の主に届かなかった。
聖剣は、少女の首の前で見えない壁にぶつかったように止まっている。
「あー、ぼっくりした!」
「ぼっくりってなに!?」
「びっくりの強化バージョン!」
「そんなもんねえよ! つーか、俺のほうがぼっくりだよ! なんで、マンタに乗ってるの!?」
声の主は、夏樹よりも幼い少女だった。
しかし、なぜか彼女はマンタの上に胡座をかいている。
「いえーい! 私はこの世界を管理している美少女だよー!」
「この子は相棒のまんたさん!」
まんたさんが器用に片方のヒレを上げて挨拶をしてくれた。
「つまり……マンタ勇者さん?」
「なにそれ意味わかんない!」




