12「絶望するんじゃね」③
「裏切り者の天使が、よくも俺たちの前に顔を出せたものだな」
門の神が吉田たちを睨む。
彼らは小梅たちの横に降りた。
「裏切り?」
「笑わせんな!」
「私たちの忠誠はピュアくんと太一郎様にある!」
吉田たちは敵戦力を削ってくれたが、負傷している。
小梅が見る限り、立っているだけでも辛いはずだ。
「吉田、山田、金田、援護助かったんじゃ。あとは任せて引いてくれんか?」
「――っ、だけど!」
「そりゃねえぜ!」
「まだ、私たちは戦えます!」
「お前たちになんかあったら、兄貴に申し訳がないんじゃ」
小梅が三人を真っ直ぐ見る。
その視線は、心配と不安があった。
「なーに、心配せんでいい。余裕を無くした絶望の神とその他なんぞ、俺様たちの敵じゃあないんじゃ!」
「……わかりました。僕たちは、後方に向かいます」
「そこで人間たちの支援をするぜ!」
「任せてください! 小梅さん、ご武運を!」
天使たちが翼を広げて飛んでいく。
追撃はない。
千手たちが睨みを利かせていたので、門の神たちは動かなかった。
いや、動く必要がなかったというべきか。
「よーく、待ってくれたのう。感謝してやってもええんじゃぞ。全殺しの予定じゃったが、九割殺しで勘弁してやるんじゃ。ありがたく涙を流して土下座せんかい!」
「俺たちは、あいつらに用があるわけじゃねえんだよ。勘違いするな。あくまでも、由良夏樹とお前たちだ! 絶望の神よ! いつまで舐められてんだ! 俺はもう我慢できない! こいつらを血祭りにあげる! いいな!」
「――絶望的にいいとも!」
「じゃあ、私も戦うよーっと!」
門の神の訴えに、ぜっくんが応えた。
すると、ずっと一歩後ろで退屈そうに状況を眺めていた松島明日香が歪な剣を持って前に出る。
「夏樹を私のものにするために戦おうって思ったんだけど、門の神さんがどっかやっちゃうからさー! でも、いいや。他の人であーそぼ!」
「いい感じだ、明日香くん! 奴らを絶望させようではないか!」
「おー!」
「さあ、お前たち! 獲物はたくさんいる! 好きなだけ殺せ! 当たりを引けば、新たな神話に名を残すだろう! 我々に逆らった愚かな人間を退治した偉大な神、魔族として!」
ぜっくんの配下たちも、それぞれ力を高くする。
そして、ぜっくんが笑った。
「どうしても絶望しない君たちに――絶望的なサプライズゲストだ!」
ぜっくんの言葉が異世界の空に響くと同時に、後方からひとりの少女が疾風のように飛び出してきた。
誰よりも早く応じたのが、聖剣火輪の剣を持った三原一登だった。
「――杏!」
剣と剣がぶつかり火花が散る。
襲いかかってきた者は、涙を流す少女――綾川杏だった。
「……たす、けて」




