14「勇者的には人間ぶっ殺したいんじゃね?」①
夏樹ははっきり告げた。
遠慮する必要はなく、濁す理由もない。
「……勇者よ」
「魔王さんがいい人っていうのはわかるよ。人間と和平ができないとしても、せめてお互いの領地に関わらないようにって思っているんだよね」
「そうだ。魔神の影響下にあったからこそ、戦いの果てに得られるものなどないと――」
「甘いっしょ」
「…………」
魔王がどのような経験をして、そのような答えに至ったのか興味はない。
夏樹は彼女の考えを一蹴し、淡々と告げる。
「あのさ、俺は人間サイドにいたから断言するけど、和平も共存も絶対できないから」
「……可能性はないのだろうか?」
「あー、ゼロではないよ。一応、魔族さんと手を取り合いましょう勢力はいるよ?」
「ならば!」
「ちなみのその勢力って、魔族滅ぼしたら奴隷っていう労働力がなくなるから残しておこうぜって考えだから」
「…………」
夏樹は勇者であったが、政治に関わったことはない。
違う。
異世界人に関わったことがない。
それでも、耳には聞きたくもない雑音が入ってくる。
大半が記憶にすることに値しない情報だったので、覚えていない。だが、繰り返し同じことを聞けば、少しくらい記憶に残ってしまう。
「人間はさ、人間だけが大事なんだよ。いや、同じ人間でも民は虐げられて、弱者が踏み躙られるのが当たり前なんだ。そんな奴らが、モンスター扱いの魔族の手を取り合って仲良くしましょうなんてするわけがねえでしょうが」
「――だが!」
「スペック的には魔族の方が上っていうのもわかる。人間も承知している。だからこそ、自分たちの上位存在を認められないから、同じ人ではなく、人間に害を与えるモンスターってことになっているんだよ」
人間は当たり前のように貴族や魔法使いという特権階級は民を虐げる。
そして民は、さらに弱者を虐げる。
子供であったり、病人であったり、奴隷であったり。
そんな人間たちが、最も虐げようとする生物が――魔族だ。
「言っておくけど、人間サイドには複数人の勇者と、異世界の神や魔族が味方についているからね」
「な」
「魔族って言っても、神と同等だから。こっちでいう魔族とは違う。それを踏まえた上で、もう一度聞くけど、魔王さんは人間とどうしたいの?」
「我は……もう民を戦わせたくない。傷つけたくないだけだ」
夏樹の問いに魔王はまっすぐ答えた。
彼女の言葉の意味を理解した上で、夏樹は鼻で笑った。
「魔王さんはいい王様になんだろうね。この世界の人間の王とかってもう勘弁してよって感じの悪党だからね。そんなのがトップの人間相手に、甘いこと言っているのなら、きっとあんたたちはこのままだよ」
「――っ、言ってくれるな」
「言うさ。俺には関係ないんだから。だけど、魔王さんたちは運がいいよ。俺が、ここにいるんだ」
夏樹は拳を振り上げて、机に叩きつけた。
轟音と共に、堅牢な長机が砕かれる。
「魔王さんたちは黙ってみてればいいよ。俺が勝手に人間どもを鏖殺してやるから。そのあとで、優しい世界でも勝手に作ればいいさ」
夏樹の傲慢とも言える言葉に、魔王は唇を噛んだ。
NGシーン
なっちゃん「うわっ、めっちゃ破片刺さった!?」




