13「そろそろ祐介くんと合流したいんじゃね?」
――ぐしゃっ。
「あ」
「うわ」
「おえっ」
佐渡祐介は、象に轢かれたアマリリス・ブレスコットが音を立てて頭から地面に落ちた光景から目を逸らした。
象さんも動きを止め、とても気まずい雰囲気を醸し出している。
ソーニャに至っては、熟れた果実が潰れたようなアマリリスを直視してしまい、吐きそうになっていた。
アマリリスと一緒に象に薙ぎ倒された騎士たちも、地面に倒れている。
無事だった者たちを含めて、一同はこの場を支配しているように見えたアマリリスの突然すぎる死に言葉がなかった。
なんとも言えない沈黙を破ったのは象さんだった。
「よう! 俺っちはガネーシャって言うんだい! 祐介っちのことはなっちゃんから聞いているぜい!」
象さんことガネーシャは、アマリリスを撥ねたことをなかったことにして祐介との出会いをやり直した。
「いやぁ、ゴッドの転移に割り込んだら俺っちだけ変なところに飛ばされちまってな。そうしたら近くに祐介っちがいるじゃねえか。こりゃ助けなきゃって、ぱおーんしたわけよ!」
「あ、ありがとうございます、ガネーシャ様」
「なんのなんの。ガネたんって呼んでくれい」
「……ガネたん様」
「様もいらねえって。俺と祐介っちの仲だろ!」
まだ動揺が消えない祐介だったが、恩人に礼を言うことは忘れない。
「えっと、あの、佐渡祐介です。よろしくお願いします?」
「おう! よろしくな! そっちのお嬢ちゃんは?」
「わ、私はソーニャだ。よ、よくわからないけど、助けてくれるならありがたいよ」
「おう! じゃあ、祐介っち、ソーニャっち! 俺の背中に乗りな!」
長い鼻を操り、ガネーシャは自らの背を指す。
「え? いいんですか?」
「いいに決まってるってば! なっちゃんはもう乗ったぜ!」
「さすが夏樹くん! じゃあ、お願いします!」
「おうよ!」
ガネーシャは鼻を器用に動かし、祐介とソーニャを掴むと、自らの背中に乗せた。
その動作を見た騎士たちが、我に返り、剣を構えるがガネーシャは気にせず足を動かした。
「いくぜいぃ!」
「お願いします!」
「よくわからないけど、蹴散らしちまえ!」
「お任せでい! ぱぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!」
蒼穹に向かい大きく雄叫びをあげると、ガネーシャはその体躯からは想像できない俊敏性でいっきにトップスピードとなり、騎士を蹴散らし走った。
「うわぁああああああああああああああああああああああああ!?」
「すげぇええええええええええええええええええええええええ!?」
そのスピードに祐介は叫び、ソーニャは大喜びした。
■
十数人の騎士は、生きていた。
仲間たちは絶命した者、意識を失った者といるが、五体満足な者は彼ら以外にいない。
「……どうする? 追うか?」
「追って、何ができるんだよ」
「だよなぁ」
「どうせ俺たちは雇われ騎士だ。指揮官も死んじまったし、罰する奴もいないだろ」
「……アマリリス様どうする?」
「俺たちには関係ないしなぁ」
「ほっとけばモンスターが食ってくれるんじゃねえか?」
「お前、天才だな!」
忠誠心も何もない騎士たちは、本当にアマリリスの亡骸を放置した。
彼女だけではない、亡くなった仲間も、動けない負傷者の助けの声さえ無視し、国へ帰っていく。
しばらくして、血の匂いを嗅ぎつけたモンスターが現れ、死肉を喰らい、動けない者を生きたまま食い散らかした。
幸か不幸か、アマリリスの潰れた頭部と、夫から送られた指輪がはめられた左腕だけが奇跡的に残ったことで、死亡が確認された。
彼女の亡骸を見た夫宮廷魔法使いレオニーは、喉が裂けんばかりの絶叫を上げたという。
ちなみに、祐介くんはソーニャさんに後ろから支えてもらっている形でガネたんに乗っています。
祐介くん(ふぉおおおおおおおおおおおおおおお! 背中にほんのり柔らかい感触が!)
ソーニャさん「……せめて表情だけでも隠せよ! 丸わかりだよ!?」
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