15「勇者的には人間ぶっ殺したいんじゃね?」②
「先ほどから好き勝手言ってくれるではないか!」
「何度でも言ってやるよ! 魔族は見ていればいい。俺がこの世界の人間を鏖殺して世界平和に導いてやるから、あとは魔族たちでおままごとでもしていろ!」
「……我らの生活がままごとだと言うのか!」
「おままごとじゃないのなら、自分の国を自分たちでちゃんと守れよ! 魔族を敵としか思っていない奴らが、魔族を殺すために勇者や神を異世界から呼んだんだぞ! 戦わない選択肢を取れば、待っているのは隷属か、死かの二択だ!」
勇者と魔王が睨み合う。
夏樹はここで魔王に何かするつもりは一切ないが、あちらはどうかわからない。
夏樹は言い過ぎたとは思っていないし、間違っているとも思わない。
敵がいて、守る者がいるのなら、すべきことはひとつしかない。
――戦え。
民が犠牲になろうとも、友が犠牲になろうとも、愛する人が犠牲になろうとも、未来を勝ち取るために戦うしかないのだ。
それが嫌ならば、滅びればいい。
「もうやめんか、夏樹」
「小梅ちゃん?」
「おどれらしくないのう」
小梅は夏樹を睨む。
「いつものおどれなら面白おかしく引っ掻き回して、笑って戦って勝つじゃろうて。なーんで、そんなぴりぴりしとるんじゃ? あれか? 異世界に来たことで、勇者時代を思い出してビビっとるんか?」
「そんなこと……」
「いーや、俺様にはわかるんじゃ! おどれは、この世界にビビっとる!」
夏樹は拳を固く握りしめた。
否定したいが、できなかった。
「安心せい、俺様たちがおる。かつて勇者として召喚された由良夏樹はひとりじゃったかもしれんが、今は俺様たちがおるじゃろう」
「小梅ちゃん」
「自分もいるっすよ!」
小梅に続き銀子が手をあげた。
「銀子さん」
「夏樹くんはいつもどおりでいいっすよ!」
「俺もいるぜ。姉御のいうように、少し身構えすぎだろ、由良」
「千手さん」
「こっちの世界に来たばかりのお前も空元気だと思っていたが、そうだよな、嫌な思いしかない世界にまた来たんだ。そりゃ、気も張るさ」
千手が電子煙草を咥え、夏樹を真っ直ぐに見ていた。
「自分らのことをもっと頼ってくれてえんやで。……まあ、夏樹くんに比べたら力はあらへんけど、それでも負けんように戦えると自負しとる。せっかく友達になったんやから、ちゃんと頼ってなぁ」
「しののん」
東雲も夏樹に微笑む。
彼の瞳は弟を見つめるように優しかった。
「由良さん、僕たちはリーダーであるあなたのためなら死ぬ覚悟ができています。いえ、違いますね。死なずに生き残る覚悟ができているんです。だから、安心して共に戦いましょう」
「……義政さん」
くいくいと眼鏡を動かしながら義政も心強い言葉をくれた。
夏樹は感動した。
この世界に対して思うことはある。
ぶっ潰したいと思っているし、この世界の人間を皆殺しにしたいとも思っている。
同時に、二度と来たくなかったとも考えていた。
虚勢を張っていたのだ。
しかし、もう恐れる必要はない。
怯える必要もない。
みんながいる。
この世界の人間にも、魔族にもない絶対的な仲間だ。
「みんな……ありがとう! 俺、いつも通りの俺を見失ってた!」
夏樹は大切な仲間であり家族であるみんなに宣言した。
「俺は俺のまま、異世界人をちゃんと滅ぼすよ!」
結局結果はかわらんのかーい!
ということで、実はなっちゃん割と精神的に不安定だった件。
祐介くんもですが、トラウマがそう簡単に消えるわけがないってことです。
……そういう意味では、勇者なっちゃんへの魔族たちのトラウマも消えないんでしょうね。
――次回もお楽しみに!




