11「興味のないお話って眠くなんね?」①
千手と東雲が、魔王ギーゼラに釘を差すと、空気が重くなる。
義政がパンパンと手を叩き、話を進めるよう促した。
「戦いが終わり……いえ終わってはいないのでしょうが、魔王と勇者の戦いはすでに勇者の勝利で終了しています。遺恨を残すな、というのは難しいでしょうが、魔族にとって勇者が味方になるということは良い未来を掴むきっかけになるでしょう。いいえ、由良夏樹さんという戦力を考えると人間など相手になりません」
「…………この子、すごーい。エルフ? それともドワーフ?」
「ヒューマンです」
「嘘だぁ!」
眼鏡をくいくいしながら、魔王に夏樹の存在価値を説いた義政に、ラーラが種族を疑った。
ラーラが信じられないと目を見開く。小梅、銀子、千手、東雲も「だよね」と言いたげに頷いている。
「ふっ。生を受けてから五年も人生の荒波に揉まれれば、こんなもんですよ」
「え!? 五歳で揉まれすぎでしょ!?」
「些細なことです」
「些細かなぁ?」
まだ義政慣れしていないラーラには、困惑しかなかった。
「そちらの名誉顧問の少年の言うように、勇者由良夏樹の力を借りることができれば人間と互角以上に戦えるだろう」
「おどれらは人間とどうなりたいんじゃ?」
小梅の疑問に、魔王が尋ね返す。
「どう、とは?」
「人間を滅ぼしたいんじゃー、とか、人間を支配下におきたいんじゃー、とかあるじゃろうて」
「――我々魔族はもう人間に関わりたくないのが本音だ」
「ほう。面白そうじゃのう」
小梅たちは、想像していなかった魔王の言葉に少なからず驚いた。
人間は魔族を滅ぼすか、完全な支配下におこうとしていることは夏樹から聞いているが、対して魔族が「人間に関わりたくない」という第三の考えであるのが興味深い。
「もともと、関わらずに暮らしていた。……最低限の交流はあったが、それがよくなかったのだろうな。魔族の――特にドワーフ製の武器武具を欲するようになった。魔族にも商人がいる。人間と交流を深めることで、互いの種族が手を取り合うことができればと考えていたのだが……」
「そうはならなかったんっすねぇ」
「その通りだ」
「でも、人間はなぜ魔族さんと敵対するようになったんすか?」
銀子の疑問に、魔王は淡々と答えた。
「人間の国は戦争ばかりしていてな。ドワーフ製の武器が戦場で活躍してしまった」
「あー。どの国も武器を欲しがったんっすねぇ。んで、阿呆な国が魔族を支配すれば、なんてことを考えたんじゃないっすか?」
「その通りだ。魔族も戦争は経験しているので、強い武器を欲するのはわかるが、人間同士の戦いに魔族が巻き込まれてはたまったものではない」
魔族は複数の種族が総じて呼ばれる。
かつて、まだ魔王がいない時代は種族同士の戦いがあった。
魔王という存在がすべての種族を束ね、現在の魔王国がある。
「人間は魔族に友好的に近づき、悪逆非道の限りを尽くした」
「えっと、内容を聞いていいっすか?」
「子供を人質に取り、武器を奪う。戦えない種族を、民を奴隷として扱った。長く生き、人よりも動ける魔族は労働力として良かったようだ」
「うえぇ。わかっていましたけど、この世界の人間ってクズっすねぇ」
同じ人間として恥ずかしいと銀子は思うが、口にしはしなかった。
「こちらも人間という種を見誤っていた。当時は、すべての人間がそうではなかったと信じたいが……奴らは、魔族を人として認識していなかったのだ」
「ちょ、それって」
「察しの通り、人間は我らを――喋るモンスターくらいにしか思っていなかったのだよ」
小梅、銀子、千手、東雲、そして義政でさえ、この世界の人間に絶句してしまった。
なっちゃん「むにゃむにゃ」(寝ています)




