間話「まもんまもんなまもんまもんじゃね?」
七つの大罪の傲慢を司る魔族であるマモンは、向島市にあるとある食堂にいた。
「まもんまもん! いやぁ、蓮の作ってくれた炒飯がうまいまもんまもん!」
カウンター席に腰掛け、美味しそうにチャーハンをかきこみ、離れて暮らす息子同然の小林蓮の成長を喜ぶ。
油断していると涙が出てきそうだった。
「おーい、姉ちゃんビールおかわり!」
「はーい」
マモンの隣では、かつて魔界をかけて魔王サタンと戦った過去を持ち、現在は青森で農家をしているサマエルがジョッキ片手に、餃子を食べていた。
エプロンを身につけた、ブロンド美人に次のビールを頼む。
すぐに運んできてくれた美人にはものすごく見覚えがあったが、つっこまないことにして喉を鳴らしてビールを飲んだ。
「かぁあああああああああああああああ! 冷たいビールを流し込んだ瞬間、生きているって感じるぜ!」
「……まもんまもん、他にももっとあるでしょうが」
「うっさい!」
「さまたん様、他にもお客さんがいるのでもう少し静かに」
「……まもんまもん言う奴に注意されちゃった!」
自分の方が常識があると信じていたサマエルはショックを受け、ラーメンを追加注文してしまった。
明日は体重計が怖い。
「……いや、お前ら青森に帰れよ。あと、まもんまもんは青森で懲役刑だろうが」
店主であり、中華鍋を器用に振るうのは、アルフォンス・ミカエルだ。
小梅の元婚約者であり、ノルン三姉妹とラブコメった挙句ハーレムった男だ。
現在は、向島市に食堂「神の炎」を開店し、繁盛している。
ただ、食堂と謳っているが、中華ばかり注文される。
「まーももももももん! 確かに、強欲を司る魔族マモンは青森で無期懲役に等しい、さまたん様の動画登録者が百万人突破するまで魔界に帰れないという刑罰を喰らったが」
「おい、無期懲役とかいんじゃねえよ。もうすぐ五万だぞ! あと九十五万じゃねえか!」
「ここにいるのは、強欲を司る魔族マモンではない!」
さまたんのツッコミは無視し、マモンは怪訝な顔をするアルフォンスに自己紹介をした。
「初めましてまもんまもん。俺はまもんまもんを司る神――まもんまもんだ!」
「なんかうぜぇ、あと何勝手に神族にジョブチェンジしてんだよ。もっと言うとまもんまもんを司る神なんていねえよ! つーか、まもんまもんてどういう意味だよ!」
「まもんまもんは魔法のまもんまもんでまもんまもん!」
「……おかしいな。油の弾ける音のせいか、こいつの言っていることの意味がわからねえ」
アルフォンスは考えるだけ無駄か、と判断し、料理に集中する。
そして、二時間ほど時間が経ち、お客が帰りマモンとサマエルだけになった。
「――蓮、立派になったなまもんまもん」
「ありがとうマモンさん」
「ふっ、人の成長は早いな。俺も負けないようにまもんまもんしなければならないな」
遅い夕食を取る蓮が烏龍茶で、マモンがビールで乾杯した。
頻繁に会うことはできないが、いずれは一緒に暮らしたいと思っている。
マモンは動画収益を亜子との新婚生活と、蓮の店を開くため貯金しているのだが、内緒だ。
「どんどんレパートリーを増やして、毎日マモンさんにご飯を食べさせてあげるからね!」
「期待しているまもんまもん!」
「みんなにもご飯を振舞ってあげたいなぁ」
「きっと叶うさまもんまもん!」
こうして蓮と楽しい時間を過ごしたマモンは、ひとつの失敗をしてしまう。
蓮と一緒に撮った写真をSNSにアップしてしまった。
しかも「我が子」として。
――無論、SNSはバズりトレンドに「まもんまもんの息子」が入った。
平和な向島市ぃ!




