81「せーめんどぅーまんじゃね?」②
霊能力者にとって伝説の存在である安倍晴明と蘆屋道満に、千手は緊張気味に恐る恐る近づき、声をかけた。
「……なあ、あんたら」
「なんや、どうかしたん?」
「お前は……確か、七森千手だったな。七森家の魔眼使い。その力は――ほう、初代以上だな」
「あーあー、何度か聞いた名やねぇ。まさか東雲と一緒に裏京都にいるとは思わんかったよ」
「――っ」
千手は蘆屋道満と安倍晴明に自分の存在が認知されていたことへの驚きと、喜びを必死に隠して、話を続けた。
「……あんたらは、どういう立場でここにいるんだ?」
「まず、ボクは裏京都をあの子に壊されんように守りに来たんよ。あの子だって、鬼退治の代償が大きかったらかわいそうやろう?」
「俺も同じだ。とはいえ、晴明も俺もあの坊主のことは知っているんだ」
「……まさか」
「夏樹は俺たちのことをよく覚えていないだろうがな。俺のことは蘆屋でも、道満でも好きに呼んでくれや」
「ボクんこともお好きにどうぞぉー」
気さくな感じで応じてくれる蘆屋道満に対し、安倍晴明は飄々としていた。
「ま、話をしているのもいいんだが、来るぞ」
「え?」
「ほーら、ボクの結界が破られてもうた。道満、防ぎ」
「お前がやれよ」
ふたりの言葉と同時に、結界内で暴れ狂っていた海の龍が結界を貫き千手たちに向かう。
前に出た蘆屋道満が九字を切った。
「――臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前」
ぱぁんっ、と音を立て海龍が不可視の壁に阻まれて破裂した。
「なんて威力だ。いたたた、爪が剥がれちまったぞ」
人差し指から血を流す蘆屋道満が、どこか楽しそうな目で夏樹を見ていた。
「――蘆屋、道満? 九字? まさか、あの蘆屋道満なんか!?」
「遅えよ!? 安倍東雲っ、お前だけが気づいてないからな!」
「なん、やと。晴明先輩、どのような伝があれば蘆屋道満と」
「あれー? この流れで、ボクはまだホストの先輩なん? いやぁ、実際ホストの先輩なんやけどぉ、あれー? 普通、気づかへんかなぁ?」
蘆屋道満の存在に気づいた東雲だが、ホスト時代のお世話になった先輩が安倍晴明まで思考がたどりつかないようだ。
第三者から見れば、兄弟のように似ているのだが、本人は意外とわからないものらしい。
「……お前の子孫間抜けだなぁ」
「可愛げがあってええやろう?」
「はっ! 笑わせるぜ! おい、安倍東雲! 俺が蘆屋道満なら、隣にいる晴明は安倍晴明に決まっているだろ!」
「………………なんやとぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」
絶叫する東雲を押し除けた千手が、蘆屋道満と安倍晴明に問う。
「東雲が鈍いのはさておき、あんたらはこっちの味方ってことでいいのか?」
「そりゃ、ちゃうで」
「……なに?」
「誤解すんな、七森千手。俺たちの立ち位置は、酒呑童子や九尾の狐と同じだ」
「裏京都や表京都に影響が出ないくらいには力を貸したるけど、基本はノータッチや。せやけど、もしも……なっちゃんが負けるんなら、いい感じに弱った狂った鬼をボクが殺したるから安心してええよ」
「……俺らも茨木童子に関しては前々から頭を痛めていたんだ。だが、奴は狡猾でな。戦おうとすると、表京都に移動しやがる。俺たちが一番嫌がることを知っているんだよ」
「ボクはあまり気にせんけどね」
「このクソ野郎! てめえは余計なこというんじゃねえ! まあ、なんだ。裏京都で喧嘩しているのは俺たちにとってもチャンスだ。晴明の言葉じゃねえが、夏樹がしくじったら尻拭いしてやるよ。ただ――」
今も茨木童子と戦い続ける夏樹を見て、蘆屋道満と安倍晴明は笑った。
「俺たちよりも強い奴の尻拭いなんて必要ないと思うがな」
「せやね。最近の子って怖いわぁ」
茨木童子さん「鈍感なしののんも好き!」
なっちゃん「きめぇええええええええええええええええ!」
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