1「爽やかな出発の朝じゃね?」①
五月。ゴールデンウィーク初日。
由良夏樹の目覚めは最悪だった。
夢の中では連日「風の神」に呼ばれ、夏樹の心の中から出してくれというお願いだったのだが、今回は「だせっ、だせぇえっ、だせぇええええええええっ!」と狂気を含んでいた。
風の神の変わりようにドン引きしたのは夏樹だけではなく、夏樹に力を与えてくれる海の神も同じだったようで、暴れる風の神の背後に素早く回り込むと、きゅっ、と締め落としてくれた。
残った時間は、夏樹と一緒に砂のお城を作って遊んだのだ。
「――というわけで、寝ているのに寝た気がしないんですが、いつものことです。おはようございます!」
「……おはようございます。毎日大変なのにお付き合いくださりどうもありがとうございます」
向島第一中学校の校門の前に、夏樹たちはいる。
すでに月読命は来ており、彼はワゴン車を用意していた。
「先生!」
「はい、どうぞ」
「ワゴン車だと人数的に足りなくないですか?」
今回、学校見学に向かうのは、由良夏樹、三原一登、小梅・ルシファー、青山銀子、星子、菜々子、七森千手、虎童子の八人に追加して、水無月都と安倍円が加わっていた。
月読を含めた総勢十一名だ。
「……過剰戦力ですね」
「先生、先生。見学、見学」
「……失礼しました。そうでした。見学でしたね。てっきり先方を更地にする気かと」
「ははははは! いやだなぁ、――そんなこと俺ひとりで十分ですよ!」
「…………そうですね」
自信満々に胸を張る夏樹に、月読はなんとも言えない顔をしていた。
「はぁ。車の件ですが、千手さんが車を出してくれるそうです」
「千手さん、車持っているんだ! きっと左ハンドルの外車だな!」
「とても偏見ですね」
「だって、千手さんですよ。ちょいワル系の金髪兄ちゃんだからオープンカーですね」
「……夏樹くん、あなたね」
「せっかくだからみんなを送ってもらおうと、ジャックに頼んだんですけど」
「待ってください。そのジャックとはもしや」
「ウチを拠点に日本各地を旅行している、ジャック・ランドック・ジャスパー・ウィリアムソン・チェインバー・花巻! 宇宙人です!」
「まさかとは思いますが、宇宙船って意味じゃないですよね?」
夏樹は不思議そうに首を傾げた。
「一直線で行けるからいいかなって思いました」
「駄目です」
「でも、今、忙しいみたいで駄目でした。宇宙船も大人数向けじゃないらしくて」
がっかりする夏樹に対し、月読は心底安堵していた。
月読は神であり、宇宙人の存在も知ってはいるが、関わったことは数える程度だ。
「本当に、本当に宇宙船じゃなくてよかったです!」
珍しく月読が大きな声を出して、その後、疲れたようにその場にしゃがんでしまった。




