101「月読先生とお話じゃね?」②
「えっと、昨日までって、昨日何かあったんですか?」
恐る恐る尋ねた夏樹に、月読が頷いた。
「はい。私の同期である笹山先生という方がいます。霊能育成学校高等部第七校で教鞭をとっている方です」
「その人から連絡があったんですか?」
「はい。上級学校――つまりエリートと言うには少し違いますが、学校の中でも上位の成績の生徒が集まるクラスがあります。そちらの生徒が少々拗らせてしまったようです。なぜか教師までも」
「こじらせ?」
夏樹はわからず首を傾げた。
一登と杏、すみれもわからないという顔をしている。
「……あまり言いたくはないんですけど、霊能力者は良くも悪くも力を持っていますので、守るべき対象の人々を下に見て、自分を上に見てしまうんです」
「あー、そういう」
都が補足してくれたので理解できた。
異世界にも魔力の有無、魔力量、魔法の才能などの生まれもったものの差でマウントを取る人間はいた。
だが、戦いに特化していても、生活ができるかどうかわからない。
強さが全てではないのは、異世界も地球も同じだ。
夏樹が強いからと、母には勝てない。
金を稼いで裕福な暮らしができるわけではないのだ。
「私も人のことは言えませんが……。はしかにかかりやすい人間はどうしてもいるのです」
「別にそういうのは良いんじゃないんですか? 厨二病の延長線上でしょう?」
都もお世辞にも夏樹との最初のコンタクトはいいものではなかった。
今の都からは、当時の雰囲気がすっかり消えている。
夏樹だって、異世界にいた時は、異世界人は全員最低愛悪の生き物だと思っていた。今もその意見は特に変わらないが。
「あの、質問してもいいですか?」
「どうぞ、杏さん」
小さく手を上げた杏に、月読が促す。
「生徒さんがはしかにかかってしまったのはわかるんですけど、先生までなんですか?」
「はい。むしろ、そこが問題です。霊能育成学校では教師は中立です。教師も調べられます。それらをクリアしたのが今の教師たちです。そんな教師たちが何に影響を受けたのかわからず、怖いのです」
「教える側が影響したのか、生徒側が影響したのかわからないので、悩ましいんだ。不思議なのは上級クラス以外は特にそう言う話がないらしい」
「先方の笹山先生曰く、――新たな神々という言葉が聞こえたことがあったようで、実際に関わっているかどうかわかりませんが、怪しいと言うことです」
「先生!」
「はい、夏樹くん!」
「そんな学校に俺を見学に連れて行こうって思ったんですか!?」
夏樹はまっすぐ月読を見た。
月読は目を逸さなかった。
「先方は外部からの風が良い影響を与えることを望んでいます」
「……はい」
「あと、私は長い時間をかけて多くの計画を立てていたんですけど、夏樹くんのおかげですべて計画が中止になりました。もちろん、良い意味でですよ。ならば、よくわからないけど学校見学と称してみんなで殴り込んだ方が早いかなと思いまして」
「月読先生!?」
「そんな、月読先生が夏樹くんみたいになっちゃった!」
「嘘っ、月読先生がまるでお兄ちゃんみたいになっちゃったよう!」
「夏樹みたいになるなんて青春じゃないわね」
「由良夏樹っ、保健室で教育的指導だ!」
「――あの、みんな俺のことなんだと思ってるの? あと、萌葱先生はシャラップ!」
自分のせいで月読が自棄になっているように見えて、胸がいたんだ。
(――っ、この気持ち、罪悪感?)
いつも迷惑をかけている自覚はあったので、大人しく学校見学に言って「はしか」にかかっている生徒を全員ぶっ飛ばすことを決めた。




