エピローグ「GWの予定じゃね?」
「と言うわけで、ゴールデンウィークは霊能育成学校高等部第七校に襲――じゃなかった、えっと、殴――でもなくて、うーんと、あ、そうそう。見学に行くことになりました!」
学校から帰宅後、由良家の茶の間に集まる夏樹、小梅、銀子、星子、菜々子、サタンといういつもの面々。
母春子はまだ仕事中で、リヴァ子は配信準備中だ。
「ツッコミ待ちなんか? 見学の前に、襲撃と殴り込みって言いおったぞ、こやつは!」
「いつも通りの夏樹くんっすねぇ。しっかし、第七校っすかー。私がちょっとだけ通っていた学校っすよ。向島市から電車でちょっとっす。電車降りてからが面倒なんすけどね」
「どういうことじゃ?」
「結界っすよ、結界。一般人が迷い込むのは問題ないっすけど、知らなくてもいいファンタジーを知ってしまうのはよろしくないんすよ。だから、なんとなーく、ここから離れたいなーって思わせる結界を張っているっすね」
「ふんわりした結界じゃのう!」
「あまり強い結界を張ってしまうと、一般人上がりの生徒さんが校舎にたどり着けなくなってしまうこともあるんすよ」
「面倒臭いのう」
「面倒臭いっす」
麦茶をグラスに注いだサタンが夏樹に手渡しながら尋ねる。
「春子さんにはなんて言うんだ?」
「普通に、学校見学を月読先生と行ってきまーすって言うよ。表側用に学校名もあるみたいだし、そういえば月読先生がパンフレット的なものをくれたから後で渡せばいいかな」
「頼むから春子さんにこっち関係は知られないでくれよ?」
「わかってるよ――って言いたいけど、それなら魔族のトップが一緒にダンスするだけじゃなくて家に住み着いているっていうのはどうなんだろうね!?」
「それはそれ、これはこれ、だ!」
「ずるい! 魔王ずるい!」
夏樹としても母に不用意に「ファンタジー」が存在することを明かす気はない。
仮に、知られたとしても「あらあら、そうなの?」で終わりそうな気がするが、それでもだ。
「それで、面子はどうなった?」
「とりあえず俺と月読先生でしょ?」
「まあ、そこが行かなきゃ始まらないからな」
「それで、小梅ちゃんと銀子さん、星子さんは強制参加」
「おいおい」
「杏さんは何かあっても困るから不参加で。めっちゃ行きたいってごねられたけど、ダメ。一登も連れていく。めっちゃ行きたくないってごねられたけど、ダメ」
「……まあ、なんというか、一登も杏もどんまいだ」
「あと、月読先生の心の平和のために千手さんも強制参加ね。きっととらぴーがついてきたがるけど、まあしょうがないということで」
「いつもの面々じゃねえか!」
「祐介くんも呼びたかったんだけど、連絡が取れないんだよねぇ。性格に言うと、メッセージ送ってもなぜか大地の神さんが返信してくる意味わかんない状況になっているので、放置することに決めた」
「……そもそも祐介には今更高校見学する必要ないんだけどな。いや、それを言うなら千手と銀子もか。――って、二人ともいないし! どこ行っちゃったの!?」
いつの間にか小梅と銀子がいなくなっていた。
煎餅を齧っていた星子が指を上に向けた。
「よくわからないけど、制服に着替えてくるって」
「今から!?」
サタンがびっくりしていると、ふたりがどたどたと音を立てて階段を降りてくる。
「どうじゃ!?」
「高校時代からスタイル変わっていないとか、自分で自分を褒めてあげたいっす!」
なぜか夏樹の通う中学校のセーラー服を着た小梅と、ブレザー姿の銀子が茶の間に現れポーズをとった。
「あのね、小梅ちゃんがどうして中学校の制服を持っているのかわからないけど、違和感がなくてびっくり普通に可愛いよ!」
「う、うむ! それならええんじゃ!」
「銀子さんはなんていうか、高校生が三年前なのに無理すんな感があって――逆にいいよね!」
「……私が言うことじゃないっすけど、夏樹くんって結構マニアックっすよね!」
魅力的なふたりの制服姿に瞳を輝かせる夏樹に、全員がちょっとだけ引いた。




