97「夜のイベントは勘弁してほしくね?」
由良夏樹は、また常夏のビーチにいた。
「……またかぁああああああああああああああああああ!」
波の音が心地よく、日差しの強い南の海だ。
しかし、実際は夏樹の心の中である。
「あのさぁ! お母さんとサタンさんがダンス教室から帰ってきて、みんなでビール飲んでいえーいってお疲れーってやってひと足先に寝たと思ったら、これね! あのさ、俺って明日学校なの! サボりたいけど頑張っていくの! なのに夢の中で疲れさせないでくれます!?」
夏樹は海に向かって絶叫した。
しかし、反応がない。
夏樹の中にいる海の神は、人見知りとのことだが、まったく反応がないのであればなぜ呼ばれたのかわからない。
「ふっふっふ、今回お呼びしたのは私です!」
明るい声がして振り返ると、亜麻色の髪をセミロングに揃えた小柄な少女がいた。
なぜスクール水着を着ているのか気になるが、話が長くなりそうだから触れないことにする。
ご丁寧に胸に「かぜのかみ」と書かれているが、触れないことにする。
「風の神さん……千手さんにいらぬちょっかいをかけて振られた哀れな神め」
「ひどい言われよう! ていうか、振られていません! まあ、私の方も順序が必要であると思ったので、まず千手くんに加護を与えているツッコミの神と話をつけたいのですが、どこにいるのか知りませんか?」
「知らないよ!?」
「え、使えな――ごほん。知らないのなら仕方がないですよね」
「おい、あんた今使えないって言っただろ!」
「ははは、嫌だな。そんなこと言うわけがないじゃないですか」
殴りてえ、と思うが間違いなく返り討ちになるだろう。
そもそも触れることができるかさえ怪しい。
目の前の少女は、ただの少女ではない。
神々よりも古い、風そのものなのだから。
「そもそもの話として、ツッコミの神っているの?」
「知りませんけど、きっといるんじゃないんですか?」
「適当!」
「新たな神々は人の想いから生まれていますから。ツッコミの想いから生まれた神だっていてもいいと思います。というか、千手くんがツッコミの勇者ならいるでしょう?」
「そりゃそうかもしれないけど」
「だから、私をここから出してください」
「――んん?」
「常夏のビーチは楽しいです。お姉ちゃんと釣りをして、カクテル飲んで、焼くそば食べて、満喫していますけど」
「俺の心の中って今どんなことになっているの!?」
「その辺はお気になさらず」
「するよ? お気にするよ?」
「そういうのはいいので、早く私を外に」
「いや、無理っす」
「ほえ?」
「あなたたち神様が勝手に入ってきたんだから、勝手に出ていってください!」
夏樹がきっぱり告げると、風の神はだらだら汗をかきはじめた。
「あのですね、ここに来られたのは海の神、陽キャの方です、のパワーで入ってきたのであって私や、大地の神、炎の神はノータッチなんです」
「…………それで?」
「海の神を見つけてきてくださいぃいいいいいいい!」
「知るかぁあああああああああああああ!」
――この後、めっちゃ鬼ごっこした。




