88「月読先生のお家にこんにちはじゃね?」①
夏樹と小梅は月読命が暮らしているマンションを教えられて移動した。
チャイムを押すと出迎えてくれたのは、月読の弟素盞嗚尊だった。
「――ウェルカム! マイベストフレンド!」
「――すさすさじゃん!」
がしっ、と抱き合う夏樹と素盞嗚尊。
「なんじゃこれ」
小梅は呆れた顔をしてさっさと靴を脱いで部屋に上がっていく。
「お、来たか! 休日に教師の家にこっそり来る生徒――控えめに言って最高だなっ!」
「青春よねぇ」
「おどれらもおったんか!」
月読の部屋のダイニングでお茶を飲んでいるのは、芋ジャーを装備した学校の神こと萌乃萌葱とツインテールとゴスロリ衣装の青春の神こと青春すみれだ。
「それはいるとも!」
「このマンションはね、月読先生が私たちのような訳ありを住ませてくれるために購入した高級マンションなのよ!」
「おどれらなんぞボロアパートでええじゃろうて」
「それもそれでありだがな!」
「青春よね!」
「……いかん、こやつらと会話がうまくできんのじゃが!」
小梅は独自の世界観の中にいる萌葱とすみれとの会話を放棄しそうになった。
萌葱はなんでも生徒と教師で考えるし、すみれは少しでも青春要素があればいいらしい。
よく夏樹はこのふたりと学校で普通に接していると感心したが、よくよく考えると夏樹も夏樹で大概であることを思い出した。
「とりあえず、座らないか?」
「はい、コーヒーでいいわよね? お砂糖とミルク入れる?」
「入れるんじゃ」
小梅はため息をついて椅子に座る。
コーヒーを受け取って、一口飲んだ。
「ふう。それにしても、おどれらも呼ばれておったんか?」
「いいや。特に呼ばれていないが、月読先生が死の神をとらえてあーんなことやこーんなことをしてると小耳に挟んだのでちょとと見に来たんだ」
「誤情報もええところじゃのう!」
「私は連れてこられたのよ。せっかく青春を探しに街に繰り出そうとしていたのに」
「……それはそれで意味がわからんのじゃが!?」
小梅は千手をこの場に連れてきたくなったが、残念かな、彼は現在休養中だ。
日々のツッコミのために今は身体をゆっくりと休めてほしい。
「落ち着け。月読先生を心配しているわけではないが、相手は死の神だ。私たちはそれなりに力があるから少しでも何か手伝いをできれば――と思うことにして、ここにいると不思議と気分がいい」
「月読命様をお助けできるなんて――青春よね!」
「おどれら絶好調じゃのう!」
そうこうしていると、月読が部屋の奥から現れた。
「ご足労すみません。想像していたよりも死の神との話が長引いてしまいました」
スラックスに白いシャツというシンプルないでたちをした月読が小梅に挨拶をし、少し困った顔をした。
「ところで、なぜ夏樹くんは我が弟と抱き合っているのでしょうか?」
「おどれらまだ抱き合っとったんか!?」
やはり千手のツッコミが欲しい。
心底小梅はそう思った。




