87「呼び出しじゃね?」
「帝国」も新たな神々も面倒臭いこと極まりないことは変わらない。
夏樹は最初こそ、この地球にもファンタジーが溢れていると知り驚きながらも楽しもうと思った。
どれだけ戦えるのか、通用するのか、わくわくする感情があった。
今もその感情はあるが、正直、面倒臭いという感情に押しつぶされそうだ。
夏樹ひとりであれば、早々に興味を失っていただろう。
「そんなわけで、何かわかったら連絡するね」
「お願いしまーす!」
「お願いするんじゃ」
「ちなみに、千ちゃんととらぴーが一緒に寝ている写真を激写して引き伸ばして印刷してリビングに飾ったら千ちゃん怒ると思う?」
「俺たちの千手さんがそんな小さいことで怒るわけないじゃない!」
「そうじゃ! 千手の懐は深海通り越してブラジルに届くくらいの深さなんじゃぞ!」
「――よろしい、ならばやるしかない!」
この後、夏樹たちはめっちゃ激写した。
虎童子は起きているのか、ベッドの上でポーズを取っている。
千手は苦しげな顔をしているので、起こさないように撮影をつづけた。
「ふう。俺のスマホのフォルダが千手さんととらぴーでお腹いっぱいになっちゃったぜ!」
「今更じゃが、雷やら何やら延々と晒されておってよくそのスマホは普通に起動するのう!」
「俺の地球の相棒だもん!」
「そう聞くと、スマホだけで無双できそうじゃのう」
「おじさん、最新スマホだよ! ずっとトイレでフリーズしていたから、え、今のスマホって高っけーってびっくりした!」
「あー」
「するのう」
「物価も高くてびっくり! 七年前のお酒とか倍だよ!?」
「それは未成年のなっちゃんにはよくわからない」
「マジでそれじゃ! ほんま、三千円で買えておった酒が六千円とか、絶対「帝国」や新たな神々のせいじゃと銀子と話し合っとるんじゃが!」
「ゆるせねえ!」
酒が絡むと夏樹が引くことになってしまうほどの熱意を出す、小梅と銀子だ。
ちなみに、母も酒にはうるさい。
「そうじゃ! 今日は春子ママがクソ親父とダンスレッスンで疲れてくるじゃろうからビールを買ってこようと銀子とリヴァ子と話し合ったんじゃった!」
「じゃあ、買いに行こうか」
「そうじゃのう。箱で買うんじゃ!」
「飲み過ぎらめぇ!」
夏樹と小梅は康弘に挨拶をして、千手と虎童子を拝んで一礼すると、マンションを後にした。
「商店街にいくんじゃー!」
「あ、待って、月読先生から電話来た」
「なんでじゃ!?」
「死の神の拷問が終わったんじゃね?」
夏樹はスマホを操作して、通話に応じた。
「へい、こちらギャラクシー河童勇者運輸の由良夏樹です! 再配達は、夜の時間帯になるけれどよろしいでしょうか!?」
「…………休日に連絡してしまいすみません。死の神から一通り話を聞いたのですが、気のせいでしょうか。私がこちらに戻ってきたところ、バトルした気配があるのですが」
「あの、特に何もなかったです。「帝国」の皇帝の小池はじめとかいうふざけた奴が調子乗って顔を見せにきたとか、幻術にはまってキャっはずかしっ、とかなってないっすねぇ」
「全部言っとるんじゃが!? おどれ、春子ママに怒られる時も、何もやっていないと言いつつ全部そうやって自ら暴露するのなんなんじゃ!?」
とりあえず学校に来るように言われた夏樹は、月読が何もツッコんでくれなかったことを寂しく思い、千手が恋しくてマンションに引き返しそうになった。




