83「俺が帝国だ、きりっ、じゃね?」②
はじめが拳を握り、構えた。
「それじゃあ、会話も楽しんだことだし――やろうか」
「面倒くさいなぁ。そもそも、どうして今?」
「俺が興味を持ったから、それだけだ」
「本当に面倒臭いな! まあ、いいや。あんたを倒せば「帝国」も終わりだもんね」
「はははは、やってみるといい!」
うんざりした顔をしたなつきに、はじめが襲いかかった。
うなりを上げた拳が夏樹に迫るが、自らの拳で弾き対応する。
続いて蹴りが放たれるが、今度も蹴りで対応した。
はじめの攻撃は、速く、重い。
だが、対処は問題なくできる。
もっとも本気を出しているわけではないのだろうが。
「身体と身体のぶつかり合いだとこんなものか。俺もお前も体術を習ったわけではなく、喧嘩の延長線上だな」
「向島一の紳士と名高い俺が喧嘩なんかするわけないだろう!」
「……結構やりたい放題だと聞いているが?」
「あれは自衛だ。喧嘩じゃない」
「ふむ。ならそうなのだろう。さて、拳を交わしたのなら、もう俺たちは友人と言えるかな?」
「言えねえよ! 寝言言うなら寝てから言え」
「つれない奴だ。今までの戦いなど知らずとも、お前が強いことはわかっている」
「そりゃどうも」
「だからこそ「帝国」に、いや俺につくんだ」
「嫌だよ」
「聞け、由良夏樹。お前たちもだ!」
はじめは夏樹だけではなく、小梅たちにも声を大にして訴えかけた。
「新たな神々は、異世界帰還者を集めている。いつの時代でも、どの国にでも、異世界に関わった人間がいる。それは大した問題じゃない。俺を含め、俺たち力を持つ人間を新たな神々程度が駒にしようと企んでいることが気に入らない」
「まあ、そりゃわからなくもないけど」
「古き神々ならばいざ知らず、新たな神々が俺たち人間を支配すると豪語しながら俺たちを集める理由は――奴らに新たな神話を作ることができないからだ。力があれば、異世界帰還者などを集めずに、己の力で人を支配し、神を倒し、魔族を下している。だが、していないのはなぜか? 奴らは自分たちでも力が足りていないとわかっているのさ」
はじめの言っていることはわかる。
先日戦った死の神は、人間を支配しよう、世界を支配しようなどと考えていない。
愛の女神の愛ちゃんも、他の新たな神々だってそうだ。
悲しいかな、強い神々こそ自由きままに生きている。
「それで、あんたの理由は?」
「人間の世界は人間が統べるべきだ。しかし、世界は日本だけじゃない。異世界帰還者だけが力を持っているわけではないことはお前も知っているだろう?」
「そりゃね」
「わかりやすく言えば霊能力者、他にも魔女、契約者、ハンターなどがいる。知っているか? 俺たちが異世界に行ったように、異世界からこの世界に来て生活している奴もいる。俺はそいつらと戦いたい。強い奴と戦いたい。わかるだろう、男の子なら!」
「わからねえよ! もうお腹いっぱいなくらい戦ったんですけど! 今も、現在進行形で!」
「俺は強い奴と戦えればいい、強い奴と戦い満足して死にたい。人間を支配する、俺たち「帝国」が頂点に立つのは戦いの結果でしかない。まあ、その辺は保に丸投げしているんだがな」
「それで、バトルジャンキー。今、殺してやろうか?」
「――心踊ることを言ってくれるじゃないか。だが、今日はまだ駄目だ。俺もまだ勇者としてすべての力を使いこなしていない。お前もそうだろう、由良夏樹、七森千手」
「……どうかな?」
「いや、俺を勇者にカウントするんじゃねえよ」
「帝国」の皇帝にまでやはり勇者扱いされた千手が力なくツッコミを入れた。
今日はもうイベントが多すぎてお腹いっぱいだ。
「由良夏樹、お前たちがお前たちの敵と戦っている間に、俺たちは俺たちの敵と戦っている」
はじめはゆっくり一振りの剣を取り出した。
刀身が輝く、ロングソードだ。
「俺は聖剣の勇者だ。一本の聖剣に選ばれたわけじゃない。複数の聖剣を使う勇者だ。これは、まあ、それほど大したことはないが異世界で戦い得た光属性の聖剣だ。名前は、忘れた」
「いいぜ、一撃ぶつけ合おうとってわけか?」
「話が早くて助かる。やはり剣を交えてこそ、だ」
夏樹が紫電を放つ。
雷が右手に収束し、一振りの剣を生み出す。
「――美しい。いくぞ!」
はじめが砂浜を蹴り上段から一気に光属性の剣を振り下ろす。
同時に夏樹も、剣を薙いだ。
「――――神鳴りの剣」




