82「俺が帝国だ、きりっ、じゃね?」①
「そう言ってくれるなよ。手に入れた力を使ってみたいと思うのは仕方がないことだろう。それも、由良夏樹と愉快な仲間たちという「帝国」と新たな神々と敵対している強者が相手だ、心が躍るってものだ」
「別に俺たちは敵対しているわけじゃねえから。お前らが敵対してくるから応じているだけだよ」
「そうか。なら、仲間になってくれ! 俺と一緒に、この世界の頂点に立ち弱者どもを支配しようじゃないか!」
「めんどいから無理!」
「釣れないな! だが、それでいい。俺は敵でも味方でも強い奴が好きだ。俺の剣と鎧を貸してやったのに、手も足も出ないような弱者は反吐がでるほど嫌いだ」
小池はじめは、夏樹たちに熱い視線を送る。
対し、夏樹は魔力の流れを見ていた。
先ほどの偽物と比べて、魔力の流れが明らかに別物だ。
しかも、巧妙に隠しているが、規格外の魔力を持っているようだ。
今も幻術にかかっている可能性もあるが、海を中心にできるかぎりの範囲の魔力を探ると幻術とは思えない、人々の動きがある。
万が一、今の夏樹の行動さえすべて管理下に置くレベルの幻術であればお手上げだ。
「参考に聞いておくけど、本物?」
「疑うよな? 本物だ」
「河童大神様に誓える?」
「ああ、誓おう」
「じゃあ、信じようかな」
幻術にかけられていることに気づき絶句していた小梅たちは、河童大神が夏樹の口から放たれたことで正気に戻り、はじめが河童大神に誓ったことでツッコミを入れようとしたが、言動はさておき真面目に話しているようだからグッと堪えることにした。
「でもさ、なんで偽物立てたの?」
「まず、異世界で手に入れた剣を使ってみたかった」
はじめは一振りの剣を取り出す。
最初から手に持っていなかったことから、夏樹と同じアイテムボックスの所有者なのだろう。
「幻惑の剣、って名前なんだが、俺も見事に引っかかってな。それでも、なんとかした。てっきり、使い手によって能力の強弱があるのかと思ったんだが、剣そのものがこの程度の力だったらしい」
「異世界の剣ね」
「お前もいくつか持ってきているだろう?」
「まあね」
「その話も詳しく聞きたいが、偽物を立てたふたつめの理由は、この男が矮小で薄汚い裏切り者だからだ」
死んではいないが意識を失っている男をはじめが睨んだ。
その目には明確な怒りが宿っていた。
「こいつは、「帝国」を裏切った。それだけなら、まあいい。よくはないが、いい。だがな、こいつは新たな神々に俺たちの情報を流していた。だから、殺す前に利用した」
「それは殺さないとな」
「そうだろう? 裏切り者には死あるのみだ」
裏切りに関しては夏樹も同意する。
実際裏切られたら、報復よりも興味をなくす可能性があるが、別にどっちでもいい。
「そうそう、偽物に名乗らせたが、俺自身が名乗っていなかったな」
「聖剣の勇者でしょ」
「そうだ。俺は聖剣の勇者、小池はじめ。俺が、俺こそが「帝国」だ」
「その台詞好きなの?」
「――大好きだ!」
「……うっす」




