66「柏原保の秘密じゃね?」②
「私は、仲間に強奪をしないと決めて敵だけに強奪をしていましたが、強くなってしまった。分保相応の力は身を滅ぼすと思い、少しずつ戦いから身を引こうと考えたんです。そんな私の前に、王女殿下が現れました。私を能無しと吐き捨て、その後も存在を無視していた王女殿下です」
ステファニーは聞かずとも、その後の展開をなんとなく察した。
「彼女は私に言いました。――才能がある勇者だと信じていた、私のために働きなさい、と」
当時の光景を思い出したのか、保がはははと笑う。
「他の誰かに言われていたら違ったんでしょうね。でも、彼女に言われたくなかった。私はかっとなってしまい、王女殿下を殺しました。正確に言えば、怒りに任せて引き裂いたら死んでしまった、と言う感じです。これは参った、と思いましたよ。一国の王女殿下ですからね。しかし、私に何も罰はありませんでした」
「――え?」
「私に罰を与えることのできる人間がいなかったのです。力がない時に笑い合った友が私に媚びへつらい、最初の出会いはさておきその後の付き合いで人格者だと分かった国王陛下、王子殿下が私の一喜一憂に敏感に反応する。恐れられるということは、地獄ですよ」
ステファニーは話を聞かずに逃げるべきだと考えていたが、彼の話を聞いてしまった。
彼の行動理由を知りたかったのだ。
「できることなら、裁かれたかった。悪いことをしたら、悪いのだと裁かれたかった。私は誰も裁けない。私がどんなことをしても、誰も、何も言えない。そんな世界に私は絶望しました。そして、興味を失ってしまったのです」
「世界を滅ぼしたのか?」
「まさか。興味のない世界にそんなことしません。私は帰る手段を探していたところ、門の神によって地球に帰還しました。調べてみれば、新たな神々が神や魔族を倒して新たな神話を作ろうとしていると聞き、とてもくだらないと思いました」
保がゆっくりとステファニーに近づいていく。
「そんな新たな神々を倒そうと意気込む愚か者も見つけました。そして、驚きました。彼は私よりも強かった。それでいて、暴力に対して罪悪感がない」
「小池はじめ」
「そう、彼です。彼は普段、気さくないい人なのですが、戦いなると狂います。たとえ、子供を戦いに巻き込んでしまったとしても、彼は巻き込まれた方が悪いと嬉々として殺すでしょう。しかし、頭はそこまでよくないので、利用することにしました」
「……それで、「帝国」を?」
「はい。我らが「帝国」の王である小池はじめが何やら頭の悪い設定が山のように書いてあるノートを気に入って大事にしていたので、その内容をベースに「帝国」を作りました。いやはや、二十歳を過ぎていながら、秘密組織みたいのを作って自分のことを公爵だと言うのは恥ずかしくて死にそうですね」
保は、小池はじめを利用して「帝国」を作り上げた。
戦うことが大好きで、思慮が浅い小池を操るのは実に容易かった。
「幸いなことに、新たな神々は私たちのような異世界帰還者を仲間にしようとしていました。強引な手を使っていることも知っていました。結構な数の異世界帰還者、もしくは勇者があちらに着いていますよ。しかも、まだ動いていない。由良夏樹たちにちょっかいを出している神々は、強いがそれだけです。弱い神々が、仲間を集め、集うんですよ。彼らはもう準備を終えかけている。動き出すのも時間の問題です。私にとっては、能力の狩場でしかありませんけどね」
「あなたは、私たちを集めて能力を奪おうとしていたんですね」
「はい。安心してください、あなたたち以上に力を大事にし、力をうまく使って見せましょう。ということで、いろいろ話した代償として死んで私に力を渡してください」
保はそう言って笑い、ステファニーを魔剣で袈裟斬りにした。




