65「柏原保の秘密じゃね?」①
豹変した保に、ステファニーが剣を動かした。
しかし、自慢の魔剣が保の首を斬ることができなかった。
「どうだったかな、私の演技は? 防御の力だて持っているんだよ」
「――あなたは」
「ふう。君との会話のおかげで魔王サタンの恐怖も薄れたよ。ありがとう」
「――あなたは!」
「あなたはなんなんだい? その続きを早く言うといい、君はここで死ぬのだからね」
首をさすりながら立ち上がった保は、笑みを浮かべているがいつもの穏やかな笑みではなく、人を馬鹿にするような顔をしていた。
「いろいろ最後に言いたいことはあるんだろうけど、ひとつ訂正を。私は誰も殺していない。助けもしなかったけどね。敗北して逃げることもできない人間は使い物にならない。だから、その力を有効活用しようとしただけのことだよ」
「……柏原保、あなたの力は強奪なの?」
「どう説明したらいいのかな。私はね、異世界に勇者として召喚されたのだけど、何も力を持っていなかったのさ。今でも覚えているよ、笑顔を浮かべていた異世界人たちがすっと表情を消したあの時のことを」
笑っているが、保の目には間違いなく怒りがあった。
「気持ちはわかるさ。勇者様おいでくださいと言ったら能無しが出てきたんだ。僕でもがっかりする。でもね、勝手に呼んでおいて失望するのならせめて感情を隠すぐらいしてほしいね」
「……あなたの境遇には同情しますが」
「いやいや、違う違う。誤解しているよ、ステファニー。私は別に異世界人に怒りを覚えたけど、その辺は別にいいんだ」
「え?」
「実際、私は能無しだ。落胆もされた。私も憤った。お互い様だ。しかし、異世界人は私の面倒を見てくれた。失望したが、勝手に召喚してしまい申し訳ないと謝罪してくれた。衣食住の保証もしてくれたんだ」
「――でも」
「まあまあ、最後まで聞いてほしいかな。私はね、感謝したよ。知識方面で私を召喚した国に貢献した。喜ばれ、感謝され、謝罪された。だからね、私は悪い感情はなかったんだ。始まりは悪くても、うまくやっていける。確信があった」
でも、うまくいかないものだね、と保が肩を竦める。
「きっかけは、私に力が発現してしまったことかな」
「後天的に力を手に入れたのですか?」
「正解。王宮の書庫でね、いくつか試したら強奪の力を手に入れてしまってね。それがわるかった。それがよくなった。でもね、それが面白かった」
「なにを」
「初めに、若き才能あふれる騎士団長殿から剣の才能を奪ってみた。冗談だったんだ。笑い話になればいいとやってみたら、できてしまった。騎士団長殿は剣の才能を失い、剣士として死んでしまった。あ、よほどショックだったようで、人としても死んでしまったけどね」
悪意はなかった。
本当になかったのだ。
「そこから、私は試してみた。多くの力を手に入れた。異世界で一番強かった能力が魔眼さ。本当に馴染みがよくて、使いこなせたから、私は対外的に魔眼の勇者を名乗ることにしたのさ。まさか能力を奪った魔眼王が邪竜を己の身に封印していたのは驚きでしたが、その邪竜を含めて奪いました」




