97「帝国の介入じゃね?」①
「それで、いつまで見ていやがる! 下っ端使ってないで、てめえが直接来い!」
夏樹が怒鳴ると、ひとりの青年が現れた。
「え? 嘘!? 私の感知に引っ掛からなかったの!?」
「きひひっ、雑魚どもばかりに気を取られているから俺に気付けないとかウケるな!」
倉庫の中のコンテナの上にいつの間にか座っている男がいた。
金髪の髪を逆立て、シルバーアクセを大量に身につけている。
破れたジーンズに、ライダースジャケットをきた十八歳ほどの青年だった。
「――守屋盛夫」
「きひひひひっ、久しぶりだなぁ、ありすぅ。それに、なんだ、鬼といちゃつくツッコミの勇者までいるじゃねえか。パパと秘書と強面のおっさんは一緒じゃねえのか? この間の借りを返したかったんだけどなぁ!」
「……あれだけやられたのに懲りてねえみたいだな。その根性だけは褒めてやる」
守谷盛夫――「帝国」に所属する人間だ。
先日、千手が「帝国」の「公爵」の地位にいる魔眼の勇者柏原保と接触した時に、一緒にいた青年だ。
盛夫自身は、勇者ではないようだが、異世界帰りであることは間違いない。記憶では、傀儡の能力を使うようだが、その力が発揮したところは千手は目にしていない。
彼は、マモンと父七森康弘、七森家秘書森山田善次郎によって為す術なく痛めつけられた。
ほんの数日前の話だ。
まさかこれほど早い再会になるとは千手も予想していなかった。
「言ってくれるなぁ、ツッコミの勇者ぁ! お前の親父にやられたところがまだ痛くて痛くて苛立つんだよ! 鬼みたいな化け物といちゃつきやがって、てめえが勇者だろうとなんだろうと、帝国に逆らうのなら鬼ごと殺してやるからな!」
「上等だ。かかってきやがれ。―――あ」
千手が言葉の途中で、変な声を出した。
小梅と花子も、ありすたちも口をあけて盛夫を見ていた。
――否、盛夫の背後に立つ人物を見ていたのだ。
「なんだよ、そんな間抜けな顔をしやがって。そんなに俺が来たのが恐ろしいのか? まあいい、泣き喚いてもてめえらの未来は変わらねえ。全員殺す。それだけだ」
まるで勝ち誇った顔をしている盛夫の肩を、――夏樹がとんとん、と叩く。
「なんだよ! 俺が喋っているんだ…………ろ?」
肩に置かれた腕を払い除けた盛夫が硬直した。
なぜ背後に人がいるのかと信じられない顔だった。
「――ギャラクシー河童勇者フォーエバーエクスプロージョンまもんまもんエターナルキック!」
夏樹の拳が盛夫の頬を捕らえた。
鈍い音がすると同時に、盛夫はコンテナから真っ直ぐに地面に叩きつけられた。




