間話「抜け駆けの予感じゃね?」①
青山銀子はネタに困っていた。
「……もっとこう、心にくるインスピレーションが降りてこないっすかねぇ。どうっすかね、小梅さん。私的には、女の子だと思っていた幼馴染みが男の子だったことにショックを受けるもこの胸の高鳴りはなんなんだろうって悶えながら絶頂してしまう主人公を描きたいっすけど」
「――絶頂いるんか!?」
ワイドショーを見ながらお茶を飲んでいた小梅は、銀子の脳内から溢れてきた妄想に危うくお茶を吹き出してしまうところだった。
「幼馴染みが男じゃったチューのはええと思うんじゃが……どこかで聞いた話じゃが。主人公が悩み悶えるのもええんじゃろう。じゃが、そこで絶頂してしまうんはなんか違うじゃろうて?」
「とりあえず絶頂しておきましょうよ」
「とりあえずでせんじゃろ!?」
「男の子はしちゃうっす」
「まじか!?」
「まじっす!?」
小梅は戦慄した。
男の子はとりあえずで絶頂してしまうとは、なんとも不可思議な生命体だと思う。
夏樹もとりあえず絶頂してしまうのか、と震えた。
「詳細を言いますと、自家発電した上での絶頂ってことっすね。なんだかんだ意識してしまって、ムラムラしちゃうじゃないっすか。なので、とりあえず絶頂ってことで」
「そんなとりあえず生でみたいな感覚なんか!?」
「そうっす!」
「そうなの!? やっぱり男の子こわいんじゃ!」
小梅の中では、ジャックとナンシーのような宇宙人よりも、男の子の方が未知なる生物に思えてきた。
「とりあえず主人公の名前を那月くんと円香ちゃんにしたんすけど」
「訴訟されるレベルなんじゃが!? まんま夏樹と円じゃろうて!?」
「合体、妊娠までいくっす!」
「男と男で妊娠できるんか!?」
「ファンタジーっすから」
「なん、じゃと」
「私が夏樹くんの通う中学校に制服を着て通うよりも、夏樹くんと円ちゃんが合体して妊娠する方が難易度は低いっす」
「まあ……そうじゃろうな」
「違いますよ!? 今のはそんなことないじゃろーって突っ込んでもらう場所っす! 納得されると困っちゃうんすけど!?」
「いや、おどれが中学生になるのは無理すぎるじゃろうて」
「夏樹くんは、私がセーラー服着て無理している感じが可愛いって言ってくれたっす!」
「無理しているって言われとるじゃろうて!」
「――あ」
「……俺様は余裕じゃが、銀子が可哀想じゃから抜け駆けして中学生活はせんでやる」
「うぅ、ありがとうございます……小梅さん」
――そんなことを言いつつも、小梅が抜け駆けして転校生として夏樹のクラスにやってくるまでもう少し。




