98「帝国の介入じゃね?」②
「「帝国」がなんだって言うんだ。無駄にカッコいい名前と設定をぶら下げてきやがって!」
夏樹以外の誰もが「――え?」と疑問の声を出してしまった。
残念だが、お世辞にも「帝国」という組織名や役職設定にカッコよさを感じなかったからだ。
特に千手に至っては、「帝国」の人間が何かを言うたびに、心の中で「おう、ノー!」と懊悩しているほどだ。
「後ろから攻撃しやがって、卑怯者が!」
アスファルトに全身をぶつけた守屋盛夫が立ち上がり、コンテナの上にいる夏樹を睨む。
「卑怯で結構、こけこっこー!」
対し、夏樹は中指を立てて応じた。
「ふざけやがって……ガキが、そんなに死にたいのなら殺してやるよ。――傀儡術。俺の手となり足となれ」
盛夫の言葉と共に、夏樹たちによって沈黙させられていた「帝国」の人間たちが、まるで人形のように無機質な動きを始めた。
全員が同じ動きをして、立ち上がる。意識がないものはそのままに、意識があるものは涙を流しながら、身体が動いていく。
傀儡術という言葉から察するに、傀儡として人を操っているのだろう。
「なるほど。誰かにお手伝いしてもらわないと戦うこともできないんだね。そんなに弱いなら無理して戦いの場にドヤ顔をして出てこなければいいのに」
夏樹は萎えた顔をした。
傀儡が操る力であることはわかる。
そう言う能力もあるのだろう。
だが、自分の力ではなく、人を操って戦おうという考えが気に入らない。
きっと、相手は「操る力こそ自分の力である」と主張するかもしれないが、夏樹には納得できない。
「舐めるなよ、ガキが。ちょっと強いくらいで調子に乗った中坊が! 俺の傀儡で泣きながら死にたくないと懇願させてやるよ! てめえは今から、為す術もなく俺に一方的に――」
守谷の言葉が途中で止まった。
否、彼だけではない。
夏樹も、千手も、小梅も、花子も、そしてありすたちも全員が硬直した。
汗が吹き出している。
暑いからではない。
身が凍るほどの殺気を当てられているからだ。
夏樹が殺気を飛ばしてくる原因に目を向けた。
確認せずともわかっている。
これほどの力を持つ者は、最近ひとりしか会っていない。
「久しぶりだな、由良夏樹」
「――ああ、久しぶりだね。死の神」
新たな神々が一柱、死の神がそこにいた。




