間話「熊童子の姿に悩むんじゃね?」②
――熊童子は考えていた。
物心ついた頃から、鬼なのに見た目は熊だった。
姉たちが可愛い可愛いと可愛がってくれたし、弟も熊ねーちゃんと慕ってくれていた。
父と不仲になる前は、一緒にどんぐりを拾いに行ったこともある。
つまり、あまり熊童子はこの姿に困ったことはない。
強いて言うならば、姉たちの部下の結婚式に出席できなかったり、料理をするのに細々としたことができなかったり苦労はしたが、料理に関しては慣れで苦手を克服している。
「べあぁぁぁぁぁぁぁ」
最近、手に入れたスマホも熊の手で問題なくできるし、SNSも余裕だ。
だが、やはり裏京都から出て来て人の世で生活をするのならば、熊の姿は不便だった。
熊童子は鬼だが人が好きだ。
かつて、森で迷子になっていた子を助け背に乗せて人里に送り届けたことは何度もある。
一時期、良き隣人として生活していた時代もあった。
しかし、現代では動物と人間にははっきりとした境界線が敷かれている。
犬や猫などの動物ならさておき、どうしても人に危害を加えてしまう動物は相入れない存在になりつつあった。
熊童子は人間が好きだし、鬼だが人を食ったことは一度もない。
食べたいと思ったこともない。
その理由は熊童子自身にもわからない。でもそれで構わないと思っている。
「べあっ」
長女茨木童子が安倍東雲と結婚し、三女虎童子が七森千手と結婚するのであれば、ざっと最低でも八十年は人間社会で生活することになるだろう。
情の深い姉たちのことだ。もしかしたら、その後も一族を見守る可能性だってある。
「べあべーあ!」
ならば、愛する家族と一緒に暮らすために、人の姿になるしかない。
今までのような不完全な姿ではなく、完全な姿になるのだ。
そうすれば、大手を振って街を歩くことができる。
誰にも迷惑をかけないし、大好きな人間を怖がらせることもない。
――何よりも、人間の姿になれば古今東西のハチミツを買いに行ける。
人間になるなら、今でしょう!
熊童子は決意した。
「べあっ、べあぁあああああああああああああああああああ!」
「ちょ、熊はん!? なんかべあべあ言ってるなぁと見守ってたんけど、急に唸り出してどないしたの!? トイレなら、ちゃんと向こうでしたって!?」
部屋の中で本を読んでいた安倍円が慌てているが、トイレではない。
抗議は人の姿になってからしよう。
そう決めて、さらなる力を込めた。
間話にて失礼いたします。
ウイルス性の胃腸炎となり、ダウンしております。
明日以降、更新止まるかもしれません。
何卒よろしくお願いいたします。




