96「とりあえず話を聞くんじゃね?」③
「さーて、これから始まるのは聞き取り調査じゃない。尋問だ! まず、椅子を用意して縛り付けてから、ガスバーナーと濡れたタオルで愉快になってもらうじゃない!」
「それは拷問じゃろうて!」
「てへぺろ!」
「かわええのう!」
「帝国」に所属するであろう異世界帰りの少年少女たちは、夏樹たちの他愛ない会話を聞いて震えていた。
会話も何もなく問答無用で攻撃してきた夏樹たちを心底「怖い」と思っているのだ。
まだ未成年の少年少女に至っては、歯をカチカチと鳴らしている。
「そういうのはいいからね! 天使的にこんなに怯えた子供たちに拷問なんてできないわよ」
「お姉ちゃん……急に常識的なことを言いよって」
「私は割と常識人枠なんですけど!?」
「常識人は結婚相談所で無理難題ふっかけないんじゃが!」
「それはもう忘れてくれない!?」
姉妹の微笑ましいやりとりを聞きながら、夏樹は再びアイテムボックスから取り出した常闇の剣で素振りを始める。
「由良、一応聞いておくが、何をするつもりだ?」
「え? 見せしめにひとり首を刎ねたら、全員なんでもゲロるんじゃないかなって」
「…………俺は、お前と戦った時によく殺されなかったと偉大なる神ジャック・ランドック・ジャスパー・ウィリアムソン・チェインバー・花巻に感謝します!」
「ジャックは神じゃないからね?」
「そういえば、我が主は? 最近、お見かけしないんだが?」
「京都旅行中だよ。酒呑童子のおっちゃんと玉藻ちゃんに歓迎されてる」
「贅沢な旅行だな……さすが、我が主とその奥方にして女神だ!」
「ジャックとナンシーが絡むと千手さんってぶっ壊れるよね!? 俺、心配だよ!?」
「馬鹿野郎、敬虔な信者を前に何を言うんだ。ぶっ壊れてなんかいない――信仰だ」
夏樹はこれ以上の何かを言うことを諦めた。
きっと涙が出てしまうから。
「んじゃ、見せしめを決めようね」
停止して動けないひとりを除き、それぞれ血を流しながら怯え正座している四人に夏樹は魔剣の鋒を向けた。
「だーれーにーしーよーうーかーなー」
ふたりが失禁した。
ひとりが失神した。
カチカチと歯を鳴らして震えている、夏樹に顔をこれでもかと殴られた少年だけが意識を飛ばすことができず、涙を流していた。
「よし。じゃあ、君にしよう。あれ? 今、気づいたけど、俺よりもちょっと上くらいかな? うわー、かわいそう。異世界から帰ってきて力をゲットしちゃってノリノリだったのに、怯えながら死んじゃうんだね。でも、ほら、運がなかったっていうか、その力を良いことに使おうとしないのが悪かったってことで、諦めてね」
「……たす、けて、くだい」
「なんで?」
「……た」
夏樹は少年の懇願を無視して、魔剣を横に薙いだ。
ぐるん、と少年が白目を剥き、失禁し、失神する。
魔剣は少年の首の手前で止まっていた。
「真面目に言うけど、てめえらなんて殺す価値もねえよ。何が帝国だ。ふざけんな」
夏樹の冷たい言葉が、倉庫に響いた。




