95「とりあえず話を聞くんじゃね?」②
「えっと、あの」
「何も話を聞いてなかった気がするんだけど!」
「たもんたもん!」
話を聞くと言いながら、即座に拳を振るった夏樹にありすと多聞が動揺し、キリエが叫ぶ。
しかし、夏樹は親指を立てて、笑顔を浮かべた。
「何を言っているの! お話、聞いたじゃない! せっかく耳を傾けたのに、仮にも仲間に文句を言うなんて――万死に値する!」
「いやいやいやいや、夏樹? 夏樹? 俺様もイラッとしたんじゃが、早い。早いじゃろ。話を聞いたとか以前の話じゃろうて。そもそも相手は夏樹に話しかけとらんじゃろう?」
「俺の心は、間違いなくあいつと会話をした。そして、生かしておく価値なし、と判断したんだ」
「嘘をつけぇ!」
「由良ぁ、お前の奇行に慣れていないお嬢さん方がドン引きしているじゃねえか! 自重しろぉ!」
「ひどい! あとでとらぴーに千手さんが他の女に色目を使ったって言ってやる!」
「おい、やめろ。マジでやめろ。虎童子は鬼だから、本気出されたらか弱い俺じゃなす術ないからな? おい、にちゃぁって顔をするな!」
敵意剥き出しにしていた男女たちも、いきなり殴られ鼻を潰されたことに動きを硬直させていた。
そして、夏樹は小梅たちと会話を重ねながらも、その隙を見逃すはずがなかった。
鼻を抑えて悶絶している男のすぐ近くにいた青年の腹部を少し力を入れて蹴り上げる。つま先が鳩尾に刺さると、青年は力なくその場に膝をつき倒れ、血の混ざった胃液を吐き出す。
「とりあえず、詳細は全員をぶちのめさせてからってことで!」
「しゃーないのう!」
「まったく、まるで蛮族じゃないの」
「由良ぁ、姐さんたち、殺すなよ!」
夏樹の拳が少年の顔面に突き刺さる。
鼻血が噴き出るが、少し加減しすぎたのか少年は足を踏ん張って耐えた。
「お、やるじゃん!」
もしかしたら防御面で優れているのかもしれないと考え、拳を振るうふりをして、膝裏に蹴りを入れる。
がくん、と体勢を崩した少年を蹴り倒し、馬乗りになると、拳を繰り返し振り下ろす。
十回ほど殴ったら、顔面を血だらけにした少年はぴくりともしなくなった。
「反撃くらいしろよぉ。魔剣の出番なかったじゃん!」
常闇の剣をアイテムボックスにしまう。
夏樹が振り返ると、小梅と花子も対応した少女たちを沈黙させていた。
「くそぉ! なんなんだお前らぁあああああああああああああああ!」
最初に鼻を潰された男が絶叫しながら向かってくる。
「――止マレ」
しかし、千手の魔眼によって停止させられた。
「まったく、ガキも混ざっているじゃねえか。力を持つと、どうして驕っちまうんだろうな」
嘆息する千手が、停止した男を小突く。
男は停止した形のまま、地面に転がった。




