94「とりあえず話を聞くんじゃね?」①
夏樹は虚空から魔剣「常闇の剣」を取り出し、肩に乗せる。
小梅は翼を一度広げると、気合を入れてから、しまう。
花子はジャージを腕まくりし、千手はサングラスの位置を直した。
「戦う気満々じゃない!?」
「は、話し合いは」
「たもんたもん!」
明らかに敵意を剥き出しにしている夏樹たちに、キリエ、ありす、多聞が驚く。
「何言っているの、あちらさんだってやる気満々じゃないの。顔を見るまで、攻撃しないだけ優しいと思って欲しいね!」
こちらに向かってきている「誰か」たちは間合いの中だ。
今すぐ攻撃をして、何が起きたのかわからないまま殺すことだってできる。
しかし、夏樹は自身が言ったように、わずかな優しさから攻撃するのを控えていた。
キリエのように何か理由があるのではないかと珍しく仏心を出したのだ。
「キリエ、ありす、よう目に焼き付けておくとええ。夏樹が珍しく、赤の他人に慈悲があるんじゃ。宝くじに当たるより珍しく貴重な光景じゃから、今回を逃したら二度と見れんかもしれんぞ!」
「姐さんの言う通り、いつもの由良ならもう相手は三枚おろしだ」
「酷い言われようねぇ」
「みんなひどいよ! 俺だって傷つくんだからね!」
いつのものノリの夏樹たちに、キリエたちが驚き絶句している。
「ま、俺だってたまには相手の言い分くらい聞いてあげようかなって思うさ!」
おそらく、今から来る人間はありすたちと一緒に、皇帝が支配する「帝国」から離反した者たちだ。
キリエと滝以外が裏切っていた事実はありすに大きなショックを与えたが、今はそれどころではない。
勇者や聖女、もしくはそれに準ずる異世界で何かしらの力を得たり、戦う力を習得した者たちが敵意を持ってやってくるのだ。
だというのに、なぜ、夏樹たちに余裕があるのかまったくわからない。
ありすもキリエも、これからどうなるのか怖くて仕方がないというのに。
「あー、いたいた。百合園ありすと篠原キリエ、そして滝こずれだ。連絡がないと思ったら、こいつらバレたのかよ。気絶しやがって」
髪を茶色に染めた少年を先頭に、男女が五人倉庫の中に入ってきた。
先頭の少年は、夏樹によって沈黙させられた少年少女を蹴り飛ばす。
「まったく使えない奴ら――でびゅっ」
そんな少年の顔面を夏樹が蹴った。
鼻が潰れ、背後に吹っ飛ぶ少年に、夏樹が吠えた。
「話は聞いてやった! ここからは戦いの時間だ!」




