92「困った時のゴッドじゃね?」①
「はぁ。由良ぁ、お前な……神無家の時みたいにノリと勢いだけで何とかなるケースばかりじゃないんだから、もう少し考えてからやれ。言っておくけど、考えればいいってわけじゃないぞ? ちゃんとやっていいのか、やっちゃいけないのか考えるんだ、いいな?」
「はーい! 俺、考えたんですけど、キリエさんのお姉さんて俺の嫌いな人間そのものなんですよね。鏖殺もざまぁもできないのなら、何をすればいいんですか!?」
「何もしなくていいんだよ!」
「えぇぇ」
何もするなと千手に言われた夏樹は不満そうな顔をしている。
千手は、電子煙草を新しくして吸い始める。
「あのな、お前さんたちは十年ちょいくらいしか生きていないから、今が人生のピークなのかもしれねえが。残念だが、人生はこれからも続いていくんだよ。あくまでも俺の経験だが、家族に対してまともに接することができないような人間はいずれどこかでボロを出すもんだ。それで、痛い目を見るんだよ」
「そういうものかなぁ?」
「そういうものさ。そっちの嬢ちゃんが何をされたのか俺にはわからねえが、悪いことって言うのはいずれ自分に返ってくるんだよ。だから、そういう馬鹿を相手にするのは時間の無駄だ。もっと利口になって、相手にしないのが一番だ」
千手の言葉に、キリエは納得できないと言わんばかりの顔をした。
無理もない。
キリエは今、辛いのだ。
千手もそれはわかっているようで、なんとも言えない顔をして頭をかく。
「と、偉そうなことを言ったが、俺も家の人間に力を使って仕返しをした馬鹿だ。やって後悔はしたことがなかったが、今になって痛い目に遭わせたはずの父親が愉快になって現れたので、人生何があるのかわからねえ。あんたは今が一番辛いのかもしれないが、それ以上に良いことだってある。人生、釣り合いが取れているもんだ」
「私は……家族のことなんて正直どうでもいいの。でも、異世界に戻ることができないのなら、こっちの世界でまた我慢しないといけない。なら―――」
「待て。待ってくれや。お嬢ちゃん、異世界に戻りたいのか?」
「……はい」
「悪いな、途中から来たもんで話をちゃんと理解していなかった。おい、由良」
「うん?」
「この子、あー、なんだ篠原キリエだったか。元の世界に返してやることはできないのか?」
問われて夏樹は肩をすくめて、首を横に振った。
「残念だけど、いくら俺がギャラクシー河童勇者で、河童の守護聖人だったとしても世界と世界を行き来するようなことはできないよ」
「お前じゃなくて、ゴッドに頼むことってできないのか? さすがに俺から頼むことはできないんだが、遠慮ない由良ならできそうな気がするんだが? 最悪、小梅の姐さんからもなんとかならねえかな?」
「――――あ!」
「おおうっ」
ゴッドに頼る、ということを夏樹も小梅もまったく考えてなかったようで、「その手があったか」という顔をした。
そして、篠原キリエは瞳に希望を宿した。




