37「友人宅ってなんか緊張しね?」③
千手もソファーに腰を下ろすと、咳払いをして、自分の起きた出来事を語った。
「――俺に異世界帰りの勇者が接触してきやがった」
先ほどまでのことを鮮明に思い出しながら千手は語っていく。
「虎童子とイタリアン食いに行ったら、柏原保って奴に声をかけられたんだ」
「……さらっと虎さんとイタリアンデートしている件」
「――ぽっ」
「由良ぁ、虎童子ぃ、静かにしろよぉ。そろそろ俺の喉を気遣えよ!?」
お約束のような夏樹の呟きと、虎童子の照れにツッコミを入れた千手が話を再会した。
「魔眼の勇者柏原保。行動理由はよくわからんが、かなりの魔眼使いだった。他にも斑目ぱおん――わかっている、名前にツッコミどろころ満載だよな。座れ、由良、三原、綾川。わかる。めちゃくちゃわかる。つい立っちゃうよな。俺も名乗られた時はどうしようかと思ったぜ。だから、座れ。そうだ。いい子だ」
斑目ぱおんと言う名の衝撃に、中学生三人が思わず立ち上がってしまった。
こういうところはまだ子供だな、と千手と征四郎が夏樹たちの反応を見て少しだけホッとした。
「斑目ぱおんも異世界帰りの勇者だ。鉄剣の勇者と言っていたな。他にも、勇者じゃないが使役の能力を持つ守屋盛夫。この三人に会った」
「七森、彼らの目的は? 新たな神々と組んでいるのか?」
「いや、逆だ。新たな神々が異世界帰り、勇者、能力者を集めているから自衛のために集まったって感じだ。ただなぁ、俺もいろいろな奴を見てきたが、力を急に持ってのぼせ上がると行き着くところは大体一緒なんだよな」
「だろうな」
髪をかきながらボヤく千手に、苦い顔をした征四郎が同意する。
夏樹たちがわからず首を傾げる。
「勇者だろうと異世界帰りだろうと力を持って歪めば新たな神々と同じように自分たちが一番ってなるのが大概だ」
「――うわ、ださ」
つい夏樹は口にしてしまった。
「なっちゃんも異世界帰りの勇者だけど、別に最強とかになろうなんて思っていないんだよねぇ。むしろファンタジーさんとイベントさんが合体して襲いかかってくるから自然と強くなるしかないというか、上には上がいまくるし!」
「……人間という括りなら由良は最強だと思うんだけどな」
「またまた。俺はお母さんには勝てないし」
「全国の中学生のほとんどがそうだよ! というか、そこじゃねえよ! 由良は母親とガチバトルしねえだろ!」
「つい先日、頭を掴まれて川に投げ捨てられました」
「――すげえな!?」
話が脱線してしまったので、千手が咳払いをして軌道修正をする。
「とにかく奴らは仲間を増やそうとしている。そこで俺に接触があった。由良たちにも接触があるはずだ。用心しておけ。いつでも連絡を取り合えるようにするんだ。いいな?」
「はーい」
「緊張感がねえ返事しやがって。それで、だ。小梅の姉さんや青山の姉さんにも伝えて欲しいんだが、奴らは人以外を敵視している面がある。虎童子に対して、明らかな敵意を向けてきやがった。理由まではわからないがな」
「小梅ちゃんはさておき銀子さんも? まあ、最近、人外みたいなこと言い出したし、新たな神々と普通に戦えるから人間か怪しくなる時があるけど」
「そうじゃねえよ! 注意喚起は仲間にするもんだろう! 特に偉大なるジャック・ランドック・ジャスパー・ウィリアムソン・チェインバー・花巻様と婚約者のナンシー・ピーティー・ロットロット・ナイジェルマリー・赤星様、妹君のジェシー・ランドック・ジャスパー・ウィリアムソン・チェインバー・花巻様にも万が一のことを考えてお伝えすべきだ」
「……そだね」
「ついでに河原で無警戒に遊んでいる河童どもにも教えてやれ。あと、ぬらりひょんにもな。サタンの旦那は、まあ魔王をなんとかできるならしてみろって感じだな」
「そうだね! 河童さんに何かあったら俺はそいつらを殺すために世界のひとつくらい犠牲にしても構わないかもしれない!」
「……どうしてお前は極端に過激なんだよ! 何かある前にちゃんと伝えて用心するように伝えろってことだ! わかったか!」
「はいっ!」
「今までで一番いい返事しやがって」
はぁ、と嘆息する千手の服を虎童子が引っ張る。
「ダーリン、ダーリン、大事なことを忘れているよ? 奴らの組織名を言わないと」
「…………あー、そうだったな。柏原保たちが所属する組織の名は「帝国」だ」
とても嫌そうに千手が告げた新たな勢力の名に、
「なにそれかっこいい!」
「――うわぁ」
「え、ださっ」
中学生三人はそれぞれの反応を見せた。




