36「友人宅ってなんか緊張しね?」②
「ここが千手さんと虎さんのお部屋かぁ! ――なんかエッチな気配がする!」
「しねえよ!」
「……バレちゃったね、ダーリン」
「おい、お前……マジでふざけんなよ。中学生たちが目をキラキラさせてるじゃねえか! おい、マジで由良、三原、綾川、俺たちはそう言う関係じゃない! 見ろ、義政先生はこんなにも冷静じゃねえか! 神無、お前からも思春期中坊どもになんとか言ってくれ!」
「……いや、なんというか、個人の付き合いにまで口を挟むわけには。友人として心から祝福しているが」
「お前も由良たちと一緒かよ!?」
男女の大人が生活している部屋に入った夏樹たちのテンションは高かった。
虎童子が余計なことを言ったせいで、夏樹の冗談が冗談ではなくなった雰囲気になってしまい、一登は気まずそうな顔をして、杏に至っては顔を真っ赤にしていた。
「とりあえず上がってくれ。もうなんか疲れた」
「おじゃましまーす」
夏樹たちが部屋に上がる。
千手の部屋は、最低限のものしかない簡素な部屋だったが、それが大人っぽく夏樹たちの目には映ったようで「ふぉぉぉ」と三人が声をあげている。
やはり中学生には、大人の一人暮らしというのは眩しく見えるようだ。
「なんか大人だね、千手さん」
「そりゃ大人だからな」
「一人暮らし……今は同棲中だけど、コーヒーメーカーがあるとか素敵ね」
「由良の大人が感じるところが微笑ましいな、おい! あと同棲中って言い直すな!」
「安心して。ベッドの下を漁ったりしないから!」
「中学生がエロ本隠すみたいなことはしねえよ!」
「鬼っ子専門誌が出てきたら、さすがにちょっとどんな反応していいのかわからねえし」
「ねえよ!? そもそもそんな本がねえだろ!」
千手がツッコミを入れている間に、虎童子は来客用のスリッパを出して「散らかってますけど、どうぞ」と杏たちを招き入れて、来客用のコップにお茶を入れて茶菓子を出してもてなし始める。
「ありがとうございます」
一登たちがお礼を言うと、「いえいえ、主人がお世話になっていますから」と虎童子が微笑み、杏たちが苦笑した。
「虎童子ぃ! お前も余計なこと言ってるんじゃねえよ! もう喉が痛えから、無理させないでくれる!?」
「――めんご!」
「いらぁってするけど、俺は大人だから怒鳴ったらしないからな」
代わりとばかりに、千手は拳をこれでもかと拳を握りしめている。
これ以上ふざけたら千手が間違いなくキレると察した夏樹は、静かにソファーの空いている場所に座ってお茶を飲み、クッキーを食べた。
「――それで、千手さんに何があったのか聞かせてもらおうか」
「……由良ぁ、最初からなんでそれが言えないんだよ!」




