35「友人宅ってなんか緊張しね?」①
「よう、由良と愉快な仲間たち」
「あ、千手さんと虎さんだ」
桐木は義政と妹を会わす約束を無事に取り付けると帰宅した。
夏樹たちは、何者かと接触があった千手を心配し、彼の拠点のマンションの前にいた。
「一登から聞いたんだけど、誰かに絡まれたんでしょう? どこ中の奴? 俺たちの千手さんをかつあげするなんて、もう処すしかねえな!」
「なんで中坊にかつあげされなきゃいけないんだよ。いや、そっちの方がマシだったんだが。そうそう、三原」
「はい?」
「悪かったな、急に連絡しちまって」
「いえ、そんな」
「だがな、混ぜるな危険って言葉をよーく覚えておいてくれ。三原が助っ人にマモンを呼んでくれたのはありがたいんだが、なぜかクソ親父と秘書の森山田も一緒にきちまってな。意気投合してまもんまもんいいながらどっか飲みに行っちまった」
「……それは、なんというか、すみません」
「あー、いや、謝らなくていいんだ。むしろ、助かった。正直、面倒くさいことになっていたから、よくも悪くも状況を引っ掻き回してくれる奴らは助かった。ありがとうな」
「はい」
千手が一登に助けを求めた結果、知り合いの中でも上位の濃い奴らが助けに来てくれた。
結果として、大きな戦いに発展しなかったものの、「帝国」という組織の登場に千手の心は大きくダメージを負ってしまうこととなった。
そして、これから「帝国」に関して夏樹たちに説明しなければならないことが負担でならない。
もしかしたら、過去の己への羞恥から死んでしまうかもしれない。
「……ふと思ったんだが、どうしてお前たちは俺のマンション知っているんだよ。教えたことあったか?」
「甘いね、千手さん。サングラスかけた金髪兄ちゃんが元気いっぱいの若い奥さんと一緒に毎日ラブラブしていると目立つんだよ。ちょっと聞けばすぐ住んでいるマンションくらいわかるの。さすがに部屋までわからなかったけどさ」
「人の噂って怖い!」
千手は知らないだろうけど、虎童子はマンションに住まう際に近所の方々に「婚約者ですぅ、よろしくお願いしますぅ」とご挨拶していた。
そのせいもあり、ご近所ネットワークにしっかり七森さん家の若い婚約者が広がった。
裏稼業をしている千手だが、意外と近所付き合いは良いため、「見た目はちょっとアレだけど、親切で素敵な青年」で通っている千手が「素敵な婚約者がいる」とさらに好感度が上がったことを本人は知ることはないだろう。
「俺たちも千手さんと虎さんの愛の巣にお邪魔するのは申し訳ないと思うんだけど」
「上がること前提かよ。まあ、いいや。俺もいろいろ話をしないといけないからな。上がってくれ。たーだーしー、暴れたりするなよ。騒ぐなよ。ご近所に迷惑かけるようなことをしたら追い出すからな!」
「へーい!」
「……めちゃくちゃ心配だ」
はぁ、とため息をついた千手が手招きすると、夏樹たちはマンションの中に入っていくのだった。




