34「子供の成長はいつだって早くね?」②
「さて、小粋なジョークを挟んだところで、僕に会わせたい方がいると伺ったのですが?」
義政がコーヒーを味わいながら、夏樹たちに問う。
「こちらのきりきりさんの妹さんが義政先生にお会いしたいってことらしいです」
「……妹さんですか……桐木、いや、さすがにそんな都合のいいことはありませんね」
事前に夏樹は、征四郎を介して桐木霧子の妹が義政に会いたい旨を伝えてある。
ただ、どのような理由で少女が義政に会いたいのかまでは聞いていない。
「義政先生?」
「いえ、なんでもありませんよ。ところで、その女性は来ていないのですか?」
「あ、ごめん。話が想像以上にとんとん拍子で進んだから、まだ妹に話していないんだ。さすがに幼稚園児にスマホ持たせるわけはいかないし」
「そうですね。僕もスマホを持っていません。やはりある程度大きくならないと、ご家族はスマホを与えることにも抵抗はあるでしょう」
それ以前に使える使えないの問題もあるようだが、不思議なことに義政は使いこなせそうな気がする。
むしろ、義政がスマホを持っていなことに違和感を覚えてしまう夏樹たちだった。
「しかし、どうして僕に急に会いたいだなんていうお話になったんですか?」
「義政先生、きっと恋だよ!」
「――ふっ、夏樹さん。愛だ恋だというのは僕たちにはまだ早いです」
「……そうかなぁ?」
「両親が絵に描いたようなクズでしたので、そういう方面はしばらく疎くていいかなと思っています」
「あー、なんかすみません!」
「いえ、夏樹さんが気にすることではありませんよ」
義政の両親は色々な人間を見てきた夏樹からしても、なかなかのクズだった。
よく義政がまともに育ったものだと思う。
最近は、征四郎が一緒にいてくれることで、義政を孤独にせず、気にかけている証拠だ。
夏樹も一登も、ここにはいない千手と祐介だって義政のことを家族だと思っている。
「……なんか五歳児なのにヘビーな感じだね。妹は、君に用事があるというかなんというか。私もちょっと言っていることがよくわからないんだけど、好きになっちゃったとかそういう感じではなかったかな」
「個人的にも気になりますが、それはいずれお会いできる日を楽しみにしておきましょう」
「うん。そうして。あ、でも、連絡ってどうしよう? なまはげ先輩を通せばいい? それとも、保護者の方の連絡先を聞いてもいいのかな?」
パフェを食べ終えた征四郎が、やんわりと桐木の申し出を断った。
「さすがに歳の離れた男の連絡先を教えてしまうのはいかがなものかと思う。親御さんにも申し訳がない。できれば、由良夏樹か三原一登を通して連絡をくれると助かる」
「……そう、ですね。わかりました。あ、でも、私、なまはげ先輩も一登きゅんも連絡先知らなかった。なまはげ先輩はどうでもいいけど、一登きゅんの連絡先を知ったとしれたら粛清されるかもしれない……リスクが高いなぁ」
「なまはげ差別しないで!?」
「粛清ってなに!?」
「女の子にはいろいろあるの。じゃあ、綾川と連絡先交換して、なまはげ先輩と一登きゅんに連絡してもらうって感じでいいかな。伝言ゲームになっちゃうけど」
「杏はオッケーだよ!」
「なっちゃんもオッケーだよ!」
「なまはげ先輩、マジで伝言ゲームだからって故意に内容変えないでよね」
「し、失敬な! ギャラクシー河童勇者たるなっちゃんがそんなことするわけがないでしょう!」
「……ギャラクシーなに? なまはげ先輩って、お母さんが看護師さんだよね? 一度、病院で診てもらった方がよくない? 主に脳を?」
「――この子ひどい! なっちゃん、こんなに酷いこと言われたの久しぶり!」」
「本っ当になまはげ先輩ってうざい!」
「しくしくしくしくしくしく」
口で勝てない夏樹は手で顔を覆って泣き始めた。
――だが、まさか義政と桐木妹の出会いがあんなことになるとは、この時誰も思わなかった。




