96「力に振り回されていてはまだまだじゃね?」①
「――あー、なんじゃ。これはスーパー美少女大天使小梅ちゃんには無理な案件じゃったな」
「残念っすけど、銀子さん巫女バージョンでも無理っすね」
「まだ五分だよ!? 根を上げるの早いよ!? もっと頑張ってよ!」
――結論から言うと、小梅と銀子は夏樹をお祓いすることができなかった。
まじまじと夏樹に残った手形のアザを見て、「無理」と判断したのだ。
「待つんじゃ夏樹! 冗談ではなく、本当に無理なんじゃよ」
「小梅ちゃーん!?」
「俺様や銀子が役立たずということではなくてじゃな。ちと真面目に話をすると、俺様も天使じゃ。お祓いはさておき、悪いもんを浄化することはできるんじゃ。むしろ、得意分野なんじゃが……夏樹のアザから悪い感じはせん。普通に怖いだけじゃ」
「その怖いのが問題な気がするんですけど!?」
「それはそうなんじゃが」
夢の中で首を絞められて、起きたらアザがくっきりついているのはホラーすぎて大問題だ。
「というよりも、夏樹くんのお話を聞く限り海の勇者としての力がなんらかの意思を持って接触してきているってことっすよね」
「……多分。使えって言ってくるから、他に心当たりがないというか。夢の中も海だし」
「逆に、そこまで条件揃っていて風の力とかだったらびっくりっすけど」
「ですよねー」
真夜中の海の中で、使えと言ってくるのであれば、夏樹でも海の勇者としての力であるとはわかる。
「ちゅーか、わかっとるんじゃったら使ってやればええじゃろう」
「――駄目よ!」
小梅の提案に、強い拒絶の声を出したのは、話に参加していなかった『蒼穹の星槍』こと星子だった。
彼女は階段から降りてくると不機嫌な顔を隠さず、夏樹たちを睨む。
「なんじゃ、なんじゃ。星子も心が狭いのう。夏樹の力は自分だけと言いたい気持ちはわからなくもないんじゃが、こうやって一緒に暮らせているんじゃ。少しくらい妥協してやってもええじゃろうて。実際問題として、夏樹に問題が起きているんじゃぞ?」
「意地悪で駄目だと言っているわけじゃないのよ」
「じゃあ、なんじゃ?」
ふう、と星子が息を吐き、はっきり告げた。
「海の勇者としての力を使ったら夏樹は破裂するわよ」
「いや、そうはならんじゃろうて!」
「さすがにありえないっすよね!? ご自分の力じゃないっすか!」
さすがに小梅と銀子は星子の言葉に納得ができないようだった。
誰かから与えられた力であればさておき、自身の力が内側から破裂するようなことがあるのかと疑問だったのだ。
「言っておくけど、夏樹の力を制限したのは私が独り占めしたいから……ってこともあるけど、夏樹のためを思ってなんだからね!」
「デレしかないじゃないっすか、ツンがないっすよ」
「今はいいのよ! 夏樹が私の使い手としてあの腐った世界に召喚された時はまだ子供で力が扱えなかった。私のような明確な意思を持つ美しく壮大な力だからこそ、夏樹の成長に合わせてサポートしながら力を使わせてあげていたの。まず、そこに感謝してほしいわね」
「星子さん、あざーっす!」
「それでいいのよ!」
ひれ伏した夏樹の上に星子が満足そうに座る。
夏樹が顔を上げると、自然と肩車をしている状態になった。
「私は、長い戦いの果てに散々力を削られて、力をふたつに分けられてしまったけど、それでも夏樹には力が大きすぎたわ。その状態で、もうひとつの力なんて使ってみせなさい。破裂して臓物を撒き散らす結果にしかならないわよ」
「……おかしいなぁ。俺、そんなことしたことがないのに、どこかでそんな光景を見たことがある気がする」




