97「力に振り回されていてはまだまだじゃね?」②
「つまり、なんじゃ。夏樹にとって星子の力だけでも持て余してしまうってことなんかのう?」
「そういうこと。ただ、あっちの世界で数年戦いを続けたこと、魔力を取り込み続けたこと、肉体が成長したことでだいぶ使えるようになったわ。べ、別に努力を認めてあげてもいいんだからねっ!」
「……おどれはツンデレないと死んでしまう病気にでもかかっとるんか? 普通に話をせい!」
「あんたに言われたくないわよ!」
「なんじゃと!?」
「何よ!?」
小梅と星子が睨み合う。
銀子がため息をついた。
「どっちもどっちっすけどね」
「銀子にも言われたくないじゃが! なんじゃその体育会系の後輩みたいなキャラを意識した言葉遣いをしとるくせに!」
「しかも、後輩キャラじゃなくて飲兵衛キャラじゃない!」
「ちょ、私は体育会系のノリを残した気さくなお姉さん枠っすから! 飲兵衛キャラじゃねーっす!」
「いや、飲兵衛じゃろう」
「飲兵衛よね」
「小梅さんだけには言われたくねーっすよ! 春子さんと一緒に毎晩飲んでるじゃないっすか! なんで私だけお酒飲んでいるみたいなキャラになってるっすか!」
「それは、ヒロインの格じゃよ!」
「それなら私だって、ヒロイン力は強いっすよ! エロゲだったら即攻略できるキャラっすもん!」
「……銀子がそれでええなら、俺様から特別何かを言うことはないんじゃが」
「あれ? なんかミスっちゃったっすか?」
言い合いを始めた小梅と銀子に、星子はやれやれと肩をすくめた。
「最後に勝利するのは、相棒の私に決まっているじゃない! なんたって、ツンデレロリ枠だもの!」
「……くっ、俺様がいくら美少女すぎても、ロリにはなれん!」
「これが、数多の世界を滅ぼした星槍の力っすか!」
「ふふん!」
サタンは「なんだかなぁ」と微妙な顔をしている。
すると、マモンがパンっ、と手を叩いた。
「そこまでにしておくでまもんまもん。今、大事なのは由良夏樹が抱えている海のまもんまもんに関してであり、女の戦いは後にするでまもんまもん」
「……それはそうなんじゃが、おどれだけには言われたくないんじゃ。早う、青森帰らんかい!」
「さまたんに勝手に青森出たことを怒られるから怖くて帰られないでまもんまもん!」
「魔王の俺は怖くないのか、そうか、いい度胸だな」
「貴様のような恋に恋する中学生のような男など怖くないでまもんまもん! なぜなら、このマモン、婚約者がいるでまもんまもん!」
「くっ」
残念だが、この場に真面目に話を続けられる者はいなかった。
せめて一登がいれば、話は違ったかもしれない。
「そうじゃなくて! ああ、もう、あんたたちは話が横に逸れるわね!」
「星子に言われたくないんじゃ」
「そうっす、そうっす!」
「今の問題は、海の勇者としての力なのよ! 夏樹はこっちの世界に戻ってきた時に、力はそのままなのに肉体と精神が元に戻ったから弱くなったの! それなのに、次から次とへと戦いがあるから無理して戦っているうちに、力を取り戻してきたけど、それでもまだまだなの!」
「じゃあ、そう説明してしばらく大人しくしてもらうように頼むことはできんのか?」
「それができれば苦労しないのよ。私もなんどか意思を持つ力同士として会話を試みたいのだけど、無理だったわ。海の力は、とにかく夏樹に使われたい、それしかないの。まあ、それだけなら放っておけばよかったんだけど、使っちゃったじゃない?」
本格的に海の力を使ったのは、茨木童子との戦いだ。
あの時の夏樹は、海の力を使わなければ茨城童子に勝てなかった。
「それをきっかけに力が活性化しているのよね。私の方で押さえ込んでいるけど」
「……えっと、夏樹くんはいつになったら海の力を使えるっすか?」
「さあ?」
「さあって、そんな適当っすね」
「適当じゃなくて、わからないのよ! そもそも、夏樹の全盛期ってあくまでも一番強かった時であって、本当の全盛期じゃなかったからね! 肉体的、能力的に本当の意味で全盛期を迎える前に、魔王と魔神を倒しちゃっただけだから!」
「なにそれふつうにこわいんじゃが」
「さすがにそれはやべーっす」
小梅と銀子は改めて、夏樹の規格外の強さに引いた。




