91「熱がある時の夢って怖くね?」①
「――恋バナの時間でまもんまもん!」
「修学旅行のノリはもうやったよ!?」
「それ以前に何でお前は青森に帰らないんだよ。魔王を前にして脱獄とかいい度胸すぎるだろ。いっそ、尊敬さえするわ」
夏樹の部屋に、魔王サタンと七つの大罪の魔族にしてまもんまもん系インフルエンサーのマモンが寝ていた。
(ら、ラブコメだったら小梅ちゃんと銀子さんと同部屋で毎日がドキドキなのに、なんでおっさんふたりと寝なきゃいけないんだろう。なっちゃん、悲しい)
やはりラブコメは創作の世界だけなのだろう。
現実は、ハリウッド俳優顔負けのイケオジと、強面なイケオジと一緒に寝るというよくわからない現状だ。
しかも、人間の夏樹に対し、魔族がふたり。
――なんだこれ。
「まあ、なんだ。夏樹。誠司と杏の件が片付いてよかったな」
「うん。でも、俺はあまり心配していなかったよ」
「そうなのか?」
「杏さんは反省して変わったんだ。いろいろ遠回りしたけど、変われたんだ。だからさ、あとは勝手に良い方向に進んでいくはずってね。ま、個人的にはファンタジーに関わらないのが一番だと思うけど、なかなか抜け出せないからなぁ」
杏も夏樹の仲間と認識されている可能性が高い。
そうなると、いずれ新たな神々が何かをしてくる可能性がある。
実際、夏樹と因縁がある人物として絶望の神は杏を利用し、勇者とした。そして夏樹と戦わせようと企んだのだ。
幸いなことに、アマイモンとガープたちのおかげで、杏は自身の言動を顧みることができ、最後には反省した。
杏だけがすべて悪いわけではなかったが、杏は自身を見つめ直し変わろうと頑張っている。なら応援するだけだ。
「敵をすべて鏖殺しても、新しい敵が出てくるからなぁ。それなら、ファンタジーに足を突っ込んだまま、戦いには関わらずに普通の生活をしてもらうのが一番なんだけど。どうなることやら」
「――ふっ、兄は大変でまもんまもん」
「もう兄じゃねーし」
「まもんっ、このマモンにはわかるでまもんまもん。なんだかんだ言いながら、なっちゃんは綾川杏のことを……ぐー、ぴー、まもんー」
「寝ちゃった!? 話しながら寝ちゃう人、初めて見たよ!?」
「あと、さりげなくなっちゃんと言って夏樹と距離を縮めているのがイラッとするな」
「まもんまもん」
「むにゃむにゃみたいな感じでまもんまもんって言ってる!」
「……もう嫌、このまもんまもん系インフルエンサー! 常識が通じないから大変! サタンさん困っちゃう!」
言葉の途中で寝てしまったマモンに、夏樹たちが肩透かしを食らう。
「俺たちも寝るか」
「そうだね。俺もいろいろあって、疲れたよ。たまには夢とかみずにゆっくり眠りたいなぁ」
「おま……それ、フラグじゃ」
「ははは、冗談だよ。んじゃ、おやすみ、サタンさん」
「おう。良い夢見ろよ」
サタンと挨拶を交わし、夏樹はゆっくり目を瞑った。
疲れていたせいか、すぐに睡魔はやってきた。
――そして、また夜の海にいた。




