表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

98/157

第98話:兵站(へいたん)の革命(誤算と、軍靴の音)

満を持して棚を埋め尽くした「魔法のカップラーメン」。だが、発売当初の動きは鈍かった。

「……オーナー、やはり価格が壁になっています。庶民には、手軽な軽食としては少し手が届きにくいようですわ」

ソラリスの報告に、ケニーは苦い顔をした。狙いすぎたか、あるいは時代がまだ追いついていないのか。商売の神様は、そう簡単には微笑んでくれない。

1. 意外な「突破口」

だが、事態は思わぬ場所から動き出した。

王国と帝国の国境付近で起きた、小規模な小競り合い。そこに派遣された王立騎士団の分隊が、個人的にケニーの店で「魔法の器」を買い溜めし、戦地に持ち込んだのだ。

「……信じられない。雪の降る行軍中、焚き火一つで、これほど温かくて栄養のある麺が食べられるなんて!」

重い干し肉や硬いパンに辟易していた兵士たちにとって、軽くて、お湯を注ぐだけで「温かい食事」に変わるカップラーメンは、まさに奇跡の結晶だった。

2. 戦場を変えた「一杯」

兵たちの士気は爆発的に高まり、補給の負担も劇的に軽減された。

「魔法の器を持ち込んだ部隊だけが、疲弊せずに進軍を続けている」

その報告は、即座に王都の軍上層部、そして敵対する帝国側にも伝わった。

「あの『器』は魔法の武器か? いや、食料だ。しかも信じがたいほど兵站に優秀な!」

帝国側は驚愕した。物流の王ケニーが作ったのは、単なる嗜好品ではなく、軍事の常識を覆す「最強の兵糧」だったのだ。

3. 帝国の脅威と「爆売れ」

「ケニー殿! 帝国から特使が来ている。あの一杯を、言い値でいいから全て売ってくれと、なりふり構わぬ交渉に来ているぞ!」

軍部からの緊急連絡。昨日まで棚で静かに眠っていたカップラーメンが、一夜にして国家間の戦略物資へと跳ね上がった。

「……よし、全在庫を放出しろ。ただし、価格は正規のままだ」

ケニーの決断により、店からは一瞬で在庫が消えた。大ヒット。それも、経営者の想像を遥かに超える「爆発的なヒット」だった。

4. 7割の冷徹な予感

だが、山積みになった注文書を前に、ケニーの目は笑っていなかった。

「……長くは続かないぞ、これは」

ケニーは、空になった棚をじっと見つめた。

「一度構造が知れ渡れば、魔法に長けた帝国ならすぐに真似し始める。麺を揚げて乾燥させ、粉末スープを作る。仕組みはシンプルだ……模倣品が出るまで、そう時間はかからないだろうな」

49歳。彼は知っている。独占的なヒットの蜜月は、いつも短い。

サ◯ンのメロディを口ずさむ余裕もなく、ケニーは次の一手――「真似できない本物の味」へのさらなる改良に向けて、再び計算機を叩き始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ