表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

85/158

第85話:万能の従事者(見下す者と、選ばれし者)

王都の貴族や、エリートを自称する文官たちの間には、ある共通の偏見があった。それは「コンビニの店員は、位の低い者が就く仕事だ」という蔑みだ。

1. 傲慢な「視線」

「ただレジに立って、物を渡すだけではないか。学も武勇もない連中が、食い繋ぐためにやる底辺の仕事だ」

店にやってきた身なりの良い騎士が、レジで手際よく調理パンを袋に詰め、同時に公共料金の納付処理を行う店員を鼻で笑った。

店員は、男の暴言を無視して、0.1秒も無駄にしない動きで次々とタスクをこなしていく。揚げ物の油加減を確認し、品出しのタイミングを計算し、背後で鳴った納品車の音に即座に反応する。

2. 誰も真似できない「戦場」

司令室からその様子を見ていたケニーは、ソラリスに静かに語りかけた。

「……あの騎士に、一度レジを代わらせてみたいものだ。三分も持たずにパニックになるだろうよ」

コンビニの仕事は、単なる労働ではない。

秒単位で変わる客列を捌きながら、バックヤードでの調理を完璧にこなし、店内の清掃状態に目を配り、かつ不条理なクレームにも笑顔で応える。これは高度な「並列思考マルチタスク」と、強靭な「精神力」を必要とする、極めてプロフェッショナルな職務なのだ。

3. 「尊厳」の重み

「オーナー、なぜ人々は彼らを馬鹿にするのでしょうか? これほどまでに街を支えているのに」

ソラリスの問いに、ケニーは窓の外、冷え込む早朝に黙々と清掃をこなす店員の背中を見つめた。

「……自分にできないことを、簡単そうに見せているプロだからさ。連中は、店員の『技術』を当たり前だと思っている。だが、この店員たちが一日いなくなるだけで、王都の物流も食生活も、あっという間に麻痺することを知らないんだ」

4. 49歳の「盾」

ケニーは店に降りていった。先ほどの騎士が、まだ不遜な態度で店員を急かしている。

ケニーは騎士の隣に立ち、その眼光だけで相手を黙らせた。

「……騎士殿。この店員がこなしているのは、あなたの戦場よりも遥かに複雑な『平穏』の維持だ。彼らがこの場所を守っているからこそ、あなたは安心してそのパンを口にできる。彼らを馬鹿にすることは、この街の命脈を侮辱することと同じだ」

ケニーは、店員の肩を叩き、レジの交代を告げた。

「……お前たちの仕事は、俺が誰よりも高く評価している。誇りを持て。ここは、誰にでもできる場所じゃない。選ばれたお前たちだからこそ回っている戦場なんだ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ